商業捕鯨1日再開 価格、量…鯨食どうなる 食文化根付く長崎 市場への影響注視

西日本新聞 社会面

 国際捕鯨委員会(IWC)脱退に伴い、1日から31年ぶりに再開される商業捕鯨。操業できる海域に生息するクジラの種類や数など必要な情報は乏しく、「調査」から「商業」への転換が及ぼす影響は不透明だ。歓迎ムードの捕鯨基地と異なり、一大消費地、長崎県の水産関係者や消費者は慎重に行方を見守る。

 「どんな種類のクジラがどのくらい供給されるのか、やってみないと分からない」。毎月、仕入れ業者向けに鯨肉入札会を開く「彼杵鯨肉」(同県東彼杵町)の板谷康司社長(69)は不安を募らせる。

 同社で扱う鯨肉の6割は調査捕鯨からの供給。種類ごとの捕獲頭数も価格も決まっており、仕入れは安定していた。消費者から「商業捕鯨が再開すると価格が下がるのでは」との声が寄せられるが、板谷社長は懐疑的だ。

 南極海や北西太平洋を舞台とした調査捕鯨と違い、商業捕鯨が可能なのは領海と排他的経済水域(EEZ)に限られる。南極海で捕獲したミンククジラなどは日本近海で捕れる可能性は低く、捕れる種類や量は減少が見込まれる。

 鯨肉加工卸会社「日野商店」(長崎市)によると、IWCに加盟しながら商業捕鯨の停止方針に異議を申し立てているノルウェーやアイスランドから輸入しているほか、国内には1年分の在庫があるため「当面は影響はない」という。専門家も「一般の消費者にはクジラの区別は付かないのではないか」と考える。

 一方、同社も価格の行方に注目する。調査捕鯨の費用は“副産物”である鯨肉の販売益で賄っており、部位によっては希少価値が高く、価格は高止まりの状態だった。商業捕鯨になれば状況は一転、市場の需給バランスで価格が決まる。日野裕一社長(64)は「安くなって消費者が手にしやすくなる可能性はある」と期待するが、クジラを食べる文化があるのは長崎など一部の地域に限られ、消費が伸びるとは言い切れない。

 「長崎くじら食文化を守る会」の川島明子会長(70)は「調査捕鯨の鯨肉は冷凍だったが、近海で捕獲すれば新鮮な刺し身も食べられる」と浸透を期待しつつ、「鯨食文化を守るためには、持続可能な捕獲量を定めることも大切だ」と強調した。

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