米朝首脳が会談 今度こそ実体伴う交渉を

西日本新聞 オピニオン面

 なかなかの見せ場があるサプライズショーだった。しかし、それだけで終わっては困る。

 米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が30日、北朝鮮と韓国の軍事境界線のある板門店で対面した。

 トランプ大統領は金委員長の勧めに応じ、韓国側から北朝鮮側へと入った。朝鮮戦争以来、米国の現職大統領が北側に足を踏み入れたのは初めてだ。

 両首脳はその後、韓国側に入り、そこで3度目となる会談を行った。会談の詳細は不明だが、両国がそれぞれ非核化に向けた交渉チームをつくり、包括的な合意を目指して数週間内に起動させることを確認した。またトランプ大統領は金委員長にワシントン訪問を要請した。

 この会談は訪韓予定のあったトランプ大統領が、短文投稿サイトのツイッターで金委員長に呼び掛けたのがきっかけで急きょ実現したとされる。事実であれば、これまでの外交常識からは考えられない展開である。

 良いか悪いかで言えば、良いサプライズであることは間違いない。今年2月にハノイで開いた2度目のトランプ-金会談が物別れに終わって以降、非核化を巡る米朝の溝は埋まらず、事務レベルの交渉は膠着(こうちゃく)状態だった。5月には北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射するなど、挑発の再開も懸念されていた。

 トランプ大統領にとって今回の会談は、こうした手詰まり状態をサプライズで塗り隠す狙いがあるだろう。ただ、とにかく首脳の対話を続けていけば、状況の退行は避けられる。米朝首脳が板門店で握手したことで、緊張緩和の前向きなムードが内外に広がることも事実だ。

 現在、イランとの間で軍事的緊張を高めている米国としては、「二正面作戦」に陥るのを避けるために、北朝鮮との対話を維持しておく必要もあった。

 ただし、今後の展開は全く楽観できない。経済制裁の解除時期を巡り、非核化にめどが立つまでは制裁を緩めない方針の米国と、段階的な制裁解除を求める北朝鮮の立場はすれ違ったままだ。金委員長が今回の会談呼び掛けに飛びついたのも、トップ会談で制裁解除を引き出そうとしたからだとみられる。

 制裁に関する思惑のずれが解消しない限り、実務チームをつくったからといって交渉が即座に進むとは思えない。今回の会談で両首脳のどちらかが譲歩したのか、気になるところだ。

 トランプ大統領は会談後、「スピードが目的ではない。包括的な合意を目指す」と語った。最良の合意に至るには「急がない」のも一手だろう。ショーはもう十分である。非核化に向けた実体のある交渉が必要だ。

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