【地域と「関係人口」】 松田 美幸さん

西日本新聞 オピニオン面

松田美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長 拡大

松田美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長

◆つなぐデザイン力が鍵

 政府は「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020~24年度)の基本方針に、定住や観光と異なり、特定の地域と継続的に関わる「関係人口」の拡大を掲げた。

 言葉の聞こえはよくても、地方の人口減少は止まらないとの厳しい指摘はあろう。だが、「人口」という言葉に過敏になり思考停止してはいけない。人口を維持できても、「人材」がいないまちに未来はあるだろうか。「数」の話ではなく、志や思い、スキルの高い域内外の人材が化学反応を起こし、地域に新たな価値をもたらす「質」の話として捉えることが大切だ。

 志を抱き、地域と関わろうとする人が惹(ひ)かれるのは、用意された住宅や仕事ではなく、「関わる」ことで何かが生まれる可能性ではないだろうか。「地域におもしろい人がいるか」「おもしろい場があるか」といった要素が重要なのだ。未来志向で関係人口が拡大している自治体や中間支援団体のリーダーに会うと、共通点に気づく。「やってみよう文化」を尊重し、「関わりのデザイン」にこだわるのだ。そして「人づくりへの本気度」がまわりを動かす。

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 人口約1万7千人の宮崎県新富町。今や地方創生の星だ。町が設立した「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構」は「世界一チャレンジしやすいまち」を掲げ、スピード感あふれる展開をしている。財団の核になる価値観の「やってみよう、なんとかなる、あなたらしく、ありがとう」は、慶応大学の前野隆司教授が提唱する幸せの四因子で、「やってみよう文化」と「個の発揮」を支えている。

 特産品で稼ぎ、人材育成に投資するのが財団の主活動。関係人口の実践でも、人材育成が柱だ。町をフィールドにビジネス手法で地域課題解決を図る講座を東京で開催。修了生が移住・起業する場合に活動支援金を提供したり、地域おこし協力隊の制度を活用するなど手厚い仕掛けも磁力を育んでいる。

 地方創生の先行地として注目を集めている徳島県神山町は人口約5千人。「まちを将来世代につなぐ」ために「多様なひと」「よい関係」「やってみる文化」が必要と掲げる。第1期の創生戦略を策定する際に「可能性が感じられるまち」の要素を議論し、そのひとつに「関係が豊かで開かれている」という項目を設けて挑む。この関係性がもたらす可能性に惹かれる人たちが国内外から往来している。

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 新富町や神山町は、まちづくり団体を役所外に設け、行政との役割分担による相乗効果を発揮している好事例。リーダーがデザイナーだったり、デザイン思考の知見を備えていることも示唆的だ。

 人口約6万5千人の福岡県福津市には、関係人口づくりに10年前から取り組んできた「津屋崎ブランチ」(山口覚代表)という団体がある。東京から移住して来た山口さんは、全国各地のまちおこしに関わり、対話と探求的な学びを通じた取り組みで、豊かな地元のつながりを国内外に広げてきた。

 気づいてみると、風の人である移住者も、土の人である地元出身者も、自立しておもしろい人材が集い、新たな風の人を引きつけている。

 訪れる人たちから、福津市は「人間性を回復するまち」と評されることがある。自然が豊かとか、時間の流れがゆったりしているというだけでなく、住民が自分らしく、のびやかに暮らしていることが伝わるからだろう。小手先の関係人口拡大策の前に、住んでいる人たちがいきいきと暮らすまちづくりに本気で挑むこと、豊かで開かれた関わりのデザインにすることが、地域の持続可能性を担保する基盤なのだと再認識している。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

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