「わけあって止まっています」キーホルダー反響

西日本新聞 くらし面

 「わけあってこちら側で止まっています」‐。こんなメッセージが描かれた東京都理学療法士協会のキーホルダーが話題を呼んでいる。歩行者のためにエスカレーターの片側を空ける慣習がなかなか改まらない中、まひやけがなど身体的な事情がある人が、気兼ねなく安全に立ち止まれるようにとの心遣いから生まれた。協会には生産が追い付かないほど注文が押し寄せているという。

 義足の人から「エスカレーターを歩く世の中を変えられませんか」と相談を受けたのをきっかけに、協会は片側を空ける慣習を見直そうと2016年秋からポスター掲示などの啓発活動を始めた。18年からキーホルダーを無料配布し、1年間で約4000個に上る。

 埼玉県の40代女性会社員は手術で脊髄を損傷し、胸から下に感覚障害と運動機能障害がある。右手で手すりにつかまり左手のつえを支えにすると体が安定するが、ラッシュ時は右側に立つことを諦めていた。キーホルダーをリュックに付けてからは、右側に立てるようになった。「事情があって歩かないんだと理解してもらえ心強い」と話す。

 キーホルダーを求める人の多くは、半身まひや脊髄疾患などで片手が動かしにくかったり、つえが必要だったりする。協会には、後方から舌打ちされたり、「どけ」と怒鳴られたりした体験が寄せられている。そうした困り事がなくても、活動を応援する人からの注文も増えているという。

 エスカレーターは歩くと転倒事故につながる恐れがあり、JR九州など鉄道各社は歩行禁止を呼び掛けている。日本エレベーター協会も立ち止まって手すりにつかまるようホームページで協力を求めるが、長年の慣習はなかなか抜けない。

 都理学療法士協会の小林和樹さん(32)は「片側を空ける何となくのルールを見直し、勇気を持って止まれるよう後押ししたい」とキーホルダーに込めた思いを語る。発送まで最長3カ月かかるが、協会のホームページで注文を受け付けている。

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