図書館の話をしよう 岩田 直仁

西日本新聞 オピニオン面

 トランプ米大統領が再選に向けて動きだした。なりふり構わぬ強硬な「米国第一主義」は、保守層に圧倒的な人気を誇るが、不信と批判の声も全米に響いている。

 そんなアンチ・トランプ派の間で話題を呼んだドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(F・ワイズマン監督)の日本公開が始まった。

 この図書館は、貧富や人種を問わず、すべての市民に膨大な知を提供するだけではない。教育と情報提供で、移民や貧困世帯の支援などにも力を入れる。運営側が重視するのは、知的自由、一部の利用者や価値観を優遇・排除しない包括性と多様性など。確かにトランプ氏が嫌いな言葉が並んでいるような…。

 福岡では9月に公開予定のこの映画、日本の図書館の未来を考える時、多くの示唆を与えてくれそうだ。

 国内では近年、「にぎわい創出」を掲げた図書館のリニューアルが相次ぐ。「複合施設化」もトレンドの一つ。

 九州には、いわゆるツタヤ図書館としてリニューアルした武雄市図書館(佐賀県)がある。書店とカフェを併設し、当時の市長が「ジャージにサンダル」の利用者がいなくなったと評価(?)したほどしゃれた空間になった。ずさんな蔵書選定などがたたり、批判は今もあるが、多くの利用者でにぎわっている。

 宮崎県では昨年、閉店した大型商業施設を転用する斬新な手法で都城市立図書館が開館した。周囲に子育て世代の支援センターや保健センターなども集約。図書館を核に市街地活性化を図る施策は今後、増えると予想される。

 運営面では、指定管理者制度の導入が増え、専門性が欠かせない司書に、非常勤が占める割合が拡大している。サービスの質を左右しそうな、気がかりな変化である。

 「知る権利」を保障する図書館は、「民主主義の砦(とりで)」と呼ばれる。では、地方の公共図書館の役割とは? 自治体と市民の協働で有名な伊万里市民図書館(佐賀県)の設置条例に明快な答えがある。

 〈すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的な地方自治の発展を促す〉

 誰もが普段着で本に親しみ、分厚い知に触れるための環境を整え、利用者を支える人材を配すことが図書館整備の要。その上で、無料・多世代利用という特性を地域活性化にどう生かすのか。

 時代の変化に適応する努力と工夫は大切だが、目先の成果に目を奪われ、本来の役割や理念を忘れては、未来は暗い。当然、図書館に限った話ではない。 (論説委員)

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