「住むのが怖い」離れる人も 西日本豪雨被災の門司・奥田

西日本新聞 社会面

 西日本の広い範囲を襲った昨年7月の西日本豪雨。7月6日には北九州市門司区奥田で裏山の土砂が家に流入し、60代夫婦が犠牲となった。いま、再び土砂崩れが発生しないよう福岡県の対策工事が進むが、災害の再発を恐れ、この地を離れた人もいる。半世紀前から住宅地に様変わりしてきた斜面地。残る世帯も高齢化が進んでおり、今後に不安を抱えながら“あの日”から1年を迎える。

 ごう音とともに台所のガラスが割れた。犠牲となった夫婦の家が土砂崩れで大きくずれて、隣の女性(58)の家に接触した瞬間だった。出張中の娘に急ぎ電話したのが6日午前7時52分。門司区では非常に激しい雨が降り注いでいた。

 夫婦を助け出すため、女性は家の壁をくりぬく要請に同意。救助に入った市消防局の吉木輝仁さん(42)は「膝上まで埋まる中、二次被害を警戒しながらの対応だった」と振り返る。夫婦の遺体は9日朝までに発見された。

 女性宅は2月に解体。心労が重なり4月、1週間ほど入院した。市内の公営住宅に身を寄せるが、家賃支援終了後に生活拠点をどうするか、「ようやく考えられるようになってきた」。年齢も考え、元の場所には戻らないという。

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 「住むのが怖い」。奥田下(しも)町内会(約120世帯)の二家(にけ)秀俊会長(70)によると、西日本豪雨の後、町内に住んでいた60代男性はこの地を去り、同市小倉北区に住まいを移したという。

 「早めに車で坂を下り、安全な場所に避難するのが最も良い」。二家会長は昨年の教訓を指摘する。「被害が出なかったらそれでいい。まず、行動しないと」

 それを実践していた人がいた。犠牲者が出た家から道路を挟んですぐの80代夫婦。子どもたちに促され、前日から玄関に着替えなどを用意。午前6時ごろから避難準備を始め、車で息子宅に向かった。後に滝のようになった道路にはまだ、それほど水はなかった。

 半世紀前に開発が始まった地区は野鳥のさえずりが響き、夏も涼しく過ごしやすい環境が自慢だ。ただ、住民は高齢化し、車で傾斜地を上り下りできなくなるのが共通の課題となっている。「高齢者による交通事故のニュースは、本当に心に突き刺さる。運転できなくなったら、ここを離れるか考えなければ」。ある男性(78)はこう漏らす。

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 西日本豪雨を機に、北九州市は斜面住宅地の居住者を減らし、段階的に更地化を進める全国でも例のない施策を打ち出した。

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