【動画あり】全市避難、足りぬ施設 鹿児島市60万人に指示

西日本新聞 社会面

 九州南部を中心に降り続く記録的な大雨で、鹿児島、宮崎両県の15市町は3日、計約110万人を対象に避難指示を出した。鹿児島市では全市民の約60万人が対象で、187カ所の避難所を開設。昨年の西日本豪雨の教訓から、各自治体は早めの避難を呼び掛けるが、対象となる市民全てを収容できる施設を確保できていないのが現状だ。専門家は「近年の大雨被害は広範囲に及んでおり、県や市町村を越えた広域避難を考えておく必要がある」と指摘している。

雨が降り止まない鹿児島市内の模様=3日

 鹿児島市の地域防災計画では、学校や公民館など240カ所を避難所に指定。洪水、土砂崩れ、地震の3種類で避難所を分け、今回は川の氾濫や土砂崩れの恐れのない場所に開設した。

 ところが、市南部の和田地区の避難所だった和田小学校では近くの川があふれ、周辺道路が冠水し、閉鎖された。同地区の別の避難所に家族4人で避難した女性(37)は「早めに指示を出したのは避難のために良かったと思うが、川がこれ以上氾濫したら、ここも大丈夫だろうか」と不安な表情を浮かべた。

 市では昨年7月の豪雨で土砂が崩れ、2人が亡くなった。土砂災害での犠牲者は、死者・行方不明者49人を出した1993年の「8・6水害」以来だった。その教訓を生かそうと、今回は早めの避難勧告、指示を出したという。市危機管理課は「60万人が実際に避難所に行ったら足りないが、全員に避難してと言っているわけではない。切迫性を伝えるため、全域の避難指示に踏み切った」と説明する。

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 消防庁によると、指定避難所の設置数は各自治体の判断に任されており、九州の3政令市でも「指定避難所で市民全員を収容できない」と口をそろえる。

 人口約158万人の福岡市では約8割がマンションなどの共同住宅に住む。全市民を対象にした避難は想定していないが、市内の全指定避難所433カ所でどれほどの人数を収容できるかは「分からない」という。熊本市は「大雨による避難指示や勧告では、マンションなど強固な建物の2階以上に避難するよう同時に呼び掛ける」と話す。

 一方、北九州市では市内約440カ所の避難所で約14万人を収容可能という。避難所の見直しは毎年実施し、公共施設だけでなく、葬祭場や教会など民間施設と連携して避難所を増やす取り組みを進めている。

 兵庫県立大大学院の室崎益輝教授(防災計画)は「全市民を収容できる避難所がないのに、避難指示や勧告を出すのは行政の本気度が市民に伝わらない。指定避難所数や場所が十分に確保できているのか検証しておく必要がある」と指摘。

 東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は、東日本大震災や西日本豪雨など過去の大規模災害で被災者を自治体の避難所に十分収容できなかった問題点を挙げ、「広域に被害が生じる災害の場合、行政区を超えた広域避難を考える必要がある。緊急時は避難所に指定されていなくても、頑丈で安全な建物に避難した方が良い」と呼び掛ける。

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