参院選公示 改めて「1強政治」を問う

西日本新聞 オピニオン面

 第25回参院選がきょう公示される。憲法改正から年金問題まで争点はさまざまだが、ひとくくりにすれば、やはり憲政史上最長すら視野に入った安倍晋三首相による「1強政治」の是非だろう。自民、公明両党が確かな政権担当能力に基づく「政治の安定」を主張すれば、野党各党は「強引な政治」のひずみを批判して軌道修正を迫る。この国の在り方や私たちの暮らしにどう関わる選択なのか。有権者の視点で考えたい。

 ▼長期政権の力学

 3年ごとに総定数の半数を改選する参院選は時の政権に対する中間評価といわれる。首相が解散権を持つとされ、政権選択を問う衆院総選挙とは異なるが、決して政変とは無縁というわけではない。

 むしろ、厳しい民意の審判を受け首相が退陣に追い込まれたケースも珍しくない。第1次内閣で参院選に臨んだ12年前の安倍首相がそうだった。歴史的な自民惨敗で与党が過半数を割り、衆参で第1党が異なる「ねじれ国会」が生まれ、1年ごとに6人の首相が交代するきっかけとなった。「片時たりとも忘れたことがない」と安倍首相が振り返るのもうなずける。

 首相として巡ってきた2度目の亥(い)年はどうか。

 安倍首相の通算在職日数は先月、初代首相の伊藤博文を超え、歴代3位となった。このまま在職すれば、8月に佐藤栄作、11月に桂太郎を抜いて歴代最長に躍り出る。無論、今回の参院選を無事に乗り切れば-が前提である。

 政権奪還の衆院選を含め安倍総裁の自民党は衆参の国政選挙で5連勝中だ。選挙のたびに「数の力」を増やし、野党の力をそいで政権の基盤を安定させ、支持層を固めていく-。安倍流政治サイクルの「好循環」と言えよう。

 他方、名だたる長期政権にふさわしい政治的業績に欠ける、という指摘も絶えない。首相が悲願の憲法改正に執念を燃やす理由をここに求めることも可能だろう。

 首相は今回の参院選について「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか。議論を進める政党を選ぶのかを(国民に)決めていただく選挙だ」と位置付けた。

 そうだろうか。公明党の山口那津男代表は「議論しないと公然と主張する政党はあまりない。そうした分け方は有権者に響かない」と疑問を呈している。

 確かに立憲民主党や国民民主党も、首相の「解散権制約」など憲法論議を公約に掲げており、首相の争点設定には無理がある。

 だが、改憲の国会発議に必要な3分の2以上の改憲勢力を維持すれば、憲法9条への自衛隊明記など自民党が公約に掲げた憲法改正が現実味を増す。改憲の是非に直結する選択であることは有権者として意識しておきたい。

 言うまでもなく「暮らしの安心」は政治の要諦である。それは「法の下の平等」や「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた憲法上の要請でもある。

 老後には公的年金以外に2千万円の蓄えが必要-と指摘した金融庁金融審議会の報告書が国民の関心を集めたのは当然だ。「100年安心」と宣伝された年金制度の持続可能性に改めて脚光が当たる一方、政府が報告書の受け取りを拒んだことで政治問題化した。

 ▼「良識の府」なら

 野党は森友・加計(かけ)学園問題と同根であり、1強政治の「隠蔽(いんぺい)体質」と批判している。自民党は「報告書は政府のスタンスとは違う」と力説し、全世代型社会保障制度の構築を前面に掲げている。参院選の大きな争点に違いない。

 政策論争は歓迎したい。同時に与野党に注文したいのは、年金を含む社会保障制度の改革を不毛な政争の具としないことだ。いたずらに年金制度の不安をあおることも、客観的な実態やデータから目をそらすことも不適切である。

 少子高齢化と人口減少が未曽有の規模と速度で進む中で、この国のかたちを大局的に議論する姿勢が必要ではないか。政党がお互いの主張をぶつけ合う一方、テーマによっては党派の枠を超えた議論の土俵をつくる。それこそ、「良識の府」と呼ばれた参院の選挙にふさわしい。

 深刻な人口減少や人手不足に真っ先に立ち向かう必要に迫られているのは、私たちが暮らす九州など地方である。折しも九州地方をはじめ西日本地域を中心に、豪雨災害が懸念される中で公示を迎える参院選でもある。熊本地震や九州豪雨の教訓を踏まえ、防災対策や自然災害からの復旧・復興を見据えた論戦にも注目したい。

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