遠く離れた本籍地、戸籍謄本の入手に一苦労 …「マイナンバー」活用はどうなった?

西日本新聞 坂本 信博

 「自分や親族の戸籍謄本が必要になったけど、本籍地が遠方にあり『郵送で手続きが必要』と聞いた。マイナンバーカードを使って居住地で発行できないの?」。福岡市の男性から、あなたの特命取材班に調査依頼が寄せられた。調べてみると…。

 婚姻届や相続などの場面で必要な戸籍謄本。本籍地が居住地から離れた場所にあり、現地の市区町村役場に足を運んで申請するのが難しい場合は、本籍地の役場に必要書類を郵送して取り寄せる▽行政書士や司法書士などの専門家や、戸籍謄本請求の代行業者に有料で依頼する―という方法がある。マイナンバーカードがあれば、インターネットを通じて申請してコンビニエンスストアなどで交付を受けることができる自治体もあるが、まだ一部に限られており、親族の戸籍は対象外だ。

 このうち郵送で取り寄せるには、①市区町村が定める様式に必要事項を記入して押印した「戸籍交付申請書」②顔写真付きのマイナンバーカードや運転免許証など請求者の本人確認書類のコピー③手数料に相当する定額小為替④返信用封筒と切手―を送る必要がある。

 戸籍交付申請書の様式は、多くの市区町村でホームページからダウンロードできる。定額小為替は現金代わりに郵便で送金できる証書で、ゆうちょ銀行や郵便局の貯金窓口で購入できる。

 ただ、一連の作業は、かなり面倒だ。

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 マイナンバー制度は「行政の効率化や国民の利便性向上」が導入時のうたい文句だったはず。このマイナンバーを使うことで、居住地からでも遠方の本籍地にある戸籍謄本を簡単に入手できるようにならないのか。

 制度を所管する内閣官房番号制度推進室に聞いてみると、担当者が「マイナンバーカードなどの本人確認書類があれば本籍地以外でも戸籍謄本が取得できる『広域交付』ができるようになります」と教えてくれた。

 戸籍情報をマイナンバー制度と連携させ、行政手続きを効率化する改正戸籍法と改正マイナンバー法が今年5月に成立。マイナンバーを示すことで年金や児童扶養手当、健康保険の出産一時金の請求ができたり、結婚や離婚、養子縁組の届け出時に戸籍証明書(戸籍謄本や戸籍抄本)の添付が不要となったりする。本籍地以外の市区町村でも、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類があれば、本人や親族の戸籍証明書が取得できるようになる。

 ただ、運用開始は「約5年後の2023年度末ごろを目指す」とかなり先。戸籍の正本は各自治体にあるが、実は法務省が災害に備えて副本を全国2カ所に集約して管理している。新たなシステムはこの副本データとマイナンバーを連動させるため、国や自治体の大規模なシステム改修が必要になるからだ。


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 二つの法改正で行政機関同士の情報連携は進むようになるものの、そこには制約もある。

 マイナンバーがあれば、法で親子関係などを証明する際に戸籍証明書を添付する必要がなくなるが、「対象は税と社会保障の分野に限られます」と法務省の担当者。広域交付も、紙だけでしか保管されていない古い戸籍などは対象外だ。

 日本弁護士連合会は昨年公表した意見書で、戸籍謄本などの利用目的として最も多く挙げられる相続手続きについて「効率化は見込めない」と指摘した。戸籍をさかのぼって調べる必要がある場合、マイナンバー法施行の2015年10月以前に亡くなった人にはそもそも連動させる個人番号がなく、対象外となるためだ。

 戸籍は高度な個人情報のかたまり。全国どこでも戸籍証明書を交付できるようになることで、書類の誤交付などプライバシー侵害の懸念も残る。法務省は「国や自治体の職員に秘密保持の義務を課し、情報の流出や不正利用に対する罰則を設けた。新システムは今まで以上に厳しく運用していく」と強調している。

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 <今回の調査依頼は、あなたの特命取材班が連携するエフエム福岡(福岡市)の番組「ハイパーナイトプログラム GOW‼」のコーナー「あな特 GOW‼支局」(毎週火曜日午後6時半~)を通して寄せられました>

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