九州・西日本豪雨 温暖化の災禍から命守れ

西日本新聞 オピニオン面

 福岡、大分両県に九州初の「大雨特別警報」が出されたのは、2017年7月5日だった。

 九州豪雨である。あれから2回目の梅雨期を迎えている。

 特別警報は「数十年に1度」の災害が差し迫ったときに発表される最大級の警報だ。ところが昨年7月6日には、福岡、佐賀、長崎の北部3県に出された。警報は以降、岡山、広島など計11府県に広がった。西日本豪雨と呼ばれる平成最悪の水害となった。

 私たちは「数十年に1度」の大雨を2年連続で体験した。単なる偶然と高をくくる状況ではない。

今年も状況は緊迫し

 気象庁は昨年8月、西日本豪雨の原因に関して「地球温暖化の寄与があったと考えられる」と指摘した。個別の豪雨と温暖化の関係を明確にしたのは初めてである。さらに、この豪雨の際は約40年間の温暖化で総雨量が6・5%増えた可能性があると解析した。

 将来にかけて温暖化が止まらなければ、豪雨による災禍は頻繁に起き得るということだ。

 今年もここ数日、九州付近に停滞する梅雨前線の影響で、鹿児島、宮崎両県では110万人以上に避難指示が出るなど緊迫した状況が続いている。

 一昨年の九州豪雨被災地は大河、筑後川沿いに広がる。特に被害が大きかったのは大分県日田市、福岡県の朝倉市と東峰村である。

 この時、気象庁は7月5日夕方に出した特別警報で「重大な危険が差し迫った異常事態です」と警告した。朝倉市は24時間雨量が約千ミリに達した。7月の月間平均雨量の3倍近くである。

 これも温暖化の影響だろう。土砂と流木が山間部から押し流され、一気に筑後川に向かった。河川は決壊し、道路は寸断された。死者・不明者は42人に上った。家屋被害は4500件を超えた。

 農林業をはじめ甚大な経済被害も生じ、被災者の生活再建への道のりは険しい。現地では河川や山林の復旧作業がなお続く。

 一連の豪雨をもたらしたのは、次々に生まれた積乱雲が列を成した線状降水帯だったとみられる。積乱雲は、脊振山(福岡、佐賀県境)の斜面で暖かく湿った空気が上昇気流となり、発生した。

 その源は海面から発散される水蒸気である。台風も同じだ。温暖化で海面水温が上昇し、大気に含まれる水蒸気量も増加している。

危険隣り合わせ多く

 気象庁によると、平成に入って以降、顕著な被害をもたらした大雨や台風は九州豪雨を含め100件を超す。年平均3件以上だ。台風は年平均で25個程度が発生する。梅雨も九州は平年で南部が7月14日ごろまで、北部が同19日ごろまで続く。油断は禁物だ。

 特に警戒が必要なのは河川に近い地域だ。九州には筑後川など1級河川だけで20水系があり、支流は約1500に上る。九州豪雨では筑後川と、北九州市中心部を流れる紫川のそれぞれ一部で、氾濫する恐れがあった。

 西日本豪雨では「晴れの国」を自負していた岡山県で、倉敷市真備町一帯が河川決壊により濁流にのまれた事実を思い起こしたい。

 土砂災害も要注意だ。九州で土砂災害警戒区域の指定対象の場所は約14万カ所に上る。山間部だけでなく、丘陵地を開発した都市部の住宅地も、危険と隣り合わせであることを忘れてはならない。

 地域によっては、西日本豪雨で起きたため池決壊も念頭に置くべきだ。民家や公共施設に近いものを「防災重点ため池」と呼び、九州は8500カ所を超す。

住民にも備えの責務

 災害対策基本法は防災・減災に関し、国と地方自治体は万全の措置を講じるため、必要な計画を作り実施する責任を明示している。相手は大自然だ。経験則が通じない災害も起こり、しかも状況は刻々と変化する。多くの自治体職員は、自身も被災当事者でありながら、そうした災害に対応しなければならない事態があり得る。

 法は住民にも、生活必需品の備蓄など万一の備えや防災活動への自発的参加を責務としている。

 自治体が作成したハザード(被害予測)マップの多くは災害の種類ごとに危険箇所を記している。公民館など緊急時の避難場所を確認するほか、知人や親類など互いの自宅を避難先に決めておくことも大事だ。九州豪雨の際、公的避難所が崖の近くにあるため、高台にある民家数軒を避難所代わりにして難を逃れた集落もあった。

 改めて「命は自ら守る」という原則を、誰もが再確認し、行動に移したい。

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