被害 また出れば「人災」 松末地区の伊藤さん 式典で再生誓う

西日本新聞 夕刊

福岡県朝倉市の追悼式で「追悼の言葉」を述べる被災地代表の伊藤睦人さん=5日午前10時40分すぎ 拡大

福岡県朝倉市の追悼式で「追悼の言葉」を述べる被災地代表の伊藤睦人さん=5日午前10時40分すぎ

 「被災した者の責任として災害から学んだ教訓を、課題を伝えていかねばならない」

 福岡県朝倉市で営まれた追悼式。関連死を含め住民18人が亡くなり、今も1人の行方が分かっていない同市松末地区で、自治組織「松末地域コミュニティ協議会」の会長を務める伊藤睦人さん(74)が代表して言葉を述べた。仲間を失った悲しみ、守れなかった悔しさ-。込み上げる感情をこらえながら、古里の再生を誓った。

 2年前のあの日。松末地区の中心部にある協議会の事務所にいた。昼前から降り始めた雨は次第に強まり、地区を流れる川はみるみる増水。職員と手分けし安否確認などに追われた。

 事務所前の道路も増水し始めたため、職員らと近くの松末小に避難した。濁流に次々とのみ込まれていく家屋や車…。その様子を校舎3階の窓から、なすすべなく見つめた。その晩。園児や児童を含む住民約50人と夜を明かした。

 翌朝。眼前に広がる光景は昨日までの風景と一変していた。山は赤茶色の肌をさらし、至る所に流木や巨岩が散乱。先人が長い年月をかけ、営々と築いてきた田んぼや畑には大量の土砂が堆積していた。

 「わが目を疑うばかりの様相で、声にならない驚愕(きょうがく)と、あふれ出る涙、体の震えを止めることができませんでした」

 あれから2年。河川や山林、農地の再生は道半ば。住民の多くは今も地区外の応急仮設住宅などでの生活を余儀なくされ、一部の集落が認定されている「長期避難世帯」の解除は見通しが立っていない。

 もどかしさが募る。それでも豪雨前より安心安全に暮らせる地域にしたい。住民の声を聞き、市や県などと交渉に駆け回る。

 「同じような被害が発生すれば、それは人災だと思います」

 亡くなった仲間たちの分まで力強く、前を向き生きていかねばならない。それが、被災者の責務だと信じて。 

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