浸水4流域備えても不安 西日本豪雨1年 筑後地区 被災者、行政対策半ば

西日本新聞 筑後版

情報公開請求で入手した鳥飼地区の浸水地図。赤は床上浸水した建物。左が筑後川、池町川は右上から左下に流れる 拡大

情報公開請求で入手した鳥飼地区の浸水地図。赤は床上浸水した建物。左が筑後川、池町川は右上から左下に流れる

床一面が浸水したジョイント久留米店(石丸文枝さん提供)

 筑後川に注ぐ支流から水があふれて久留米市や小郡市の広範囲が浸水した昨年7月の西日本豪雨から1年を迎えた。久留米市を中心に、浸水被害が発生した主な4地区・流域の被災者を訪ね、被害の状況を振り返りながら、今年の梅雨に向けた備えや課題を聞いた。(浸水棟数は住宅、事業所、農業施設などを含む)

■金丸川・池町川(浸水約600棟)

 久留米市中心部の南に位置する鳥飼地区は住宅と事業所が並ぶ地域。浸水被害は、池町川と金丸川の合流部と、池町川の下流約1・2キロ沿いに集中した。

 産業機械製作「フラターテック」(同市梅満町)はかさ上げした土地に立つ工場が床上浸水した。代表の池上晃さん(45)によると、工場前の道路が冠水することは何度もあったが、工場内まで水が入ってきたのは初めて。近所の事業所も軒並み漬かったという。

 当初は道路からの水を板で止めていたが、浸水深は徐々に1メートルに達し、旋盤などの加工機械は水浸しになった。「もし電気系統まで駄目になっていたら…。廃業も頭をよぎった」と振り返る。

 機械を乾かし、工場内の清掃や破損した物品の撤去に追われ、約1カ月は仕事にならなかった。復旧後、工場を防水フェンスで囲う対策も考えたが、費用の問題で断念した。「町工場には負担が重い。行政に何らかの被害軽減策をお願いしたい」と願う。

■下弓削川(浸水約700棟)

 流域の久留米市の合川地区は、多くの商店や事業所が集まる。食品スーパー「ジョイント久留米店」(同市東合川)は、入り口に設置した止水シート(高さ約90センチ)を超えて水が侵入し、豪雨翌日から8月1日の営業再開まで1カ月近くの休業を余儀なくされた。

 同店では、昨年の豪雨を受けて従業員間で新たに申し合わせた。敷地内に止めた従業員の自家用車が次々に水没して移動や帰宅の足を奪われた教訓から、5段階の大雨の警戒レベルが3に達した場合、鮮魚や青果など各部門の責任者が車を近くの安全な場所に移動させ、同時に入り口などに土のうを準備する。

 また、浸水に伴い本来の閉店時間前に営業を取りやめようと運営会社(宇美町)に電話で許可を求めたが「こちらの状況をなかなか分かってもらえなかった」(石丸文枝店長)ため、店側の判断で閉店できるよう社内の運用をあらためた。

 より高さのある止水シートに取り換えることも検討したが、水圧で建物に被害が及ぶ可能性があり、断念した。今年の梅雨を迎えて、石丸店長は「ものすごく不安がある。他の事業所がどんな対応をしているのか知りたい」と話した。

■陣屋川(浸水約700棟)

 久留米市北野町では、陣屋川の堤防沿いの住宅地が浸水し、特に丸三団地とコスモス団地、その周辺に被害が集中した。コスモス団地に隣接する高良地区の堀江英二さん(72)は「腰の上まで水が来て、避難できなくなった」と振り返る。住民の多くは消防団などのボートで避難したという。

 被災後に浮かんだ課題は、指定避難所に向かうには陣屋川を渡る必要がある▽陣屋川が分岐する部分の水門が常時開放され、分岐から下流域の住宅地が浸水しやすい‐など。堀江さんは約千人分の署名を集め、水位が上がった陣屋川から筑後川に排水する設備の能力増強などを求める要望書を県と市に提出した。

 その後、陣屋川に架かる近くの橋に水位計と監視カメラが新設され、インターネット上で水位が公開されるようになったが、排水能力の増強は実現していない。堀江さんと署名をまとめた馬越幹男さん(66)は「ネットを使わない高齢者にどう水位の情報を伝えるのか。行政は具体的な方策を考えてほしい」と望む。

■山ノ井川(浸水約800棟)

 浸水範囲は、筑後川と合流する最下流部の城島町から、上流に向かって三潴町、筑後市、大木町までの約6キロに広がった。農地のほか、水田を宅地化した地域に被害が集中している。

 周辺では、2012年の九州北部豪雨など浸水被害が頻発。県は本年度、堤防のかさ上げによる浸水対策事業に予算を計上した。

 県によると、5年かけて低い箇所を1メートル程度高くする。総事業費は24億円で、昨夏の豪雨と同程度の雨なら床上浸水を防ぐ効果が見込まれるという。

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