見たことがない僕 引き出された 映画「凪待ち」主演 香取慎吾さん

西日本新聞

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香取慎吾さん

 アウトローを描く作品に定評がある白石和弥監督の新作「凪(なぎ)待ち」は、人間の弱さと再生を描いたヒューマンドラマです。ギャンブルから抜け出せない主人公、木野本郁男を演じるのは香取慎吾さん。はつらつとしたイメージとは別人のような香取さんがスクリーンにいます。

 -ギャンブルから抜けられずどこまでも落ちていく男。香取さんには珍しい役のようでしたが。

 ★香取 ゾクゾクワクワクしながらこの役を楽しんだ感じでしたかね。挑戦という意味では、猿(孫悟空)になったり(忍者)ハットリくんにもなったりしているので、それに比べたら人間を演じているわけですから(笑)。あんまりやったことがない役柄として、自分の年齢とも近い男ですし、日々撮影が面白かったです。

 -伏し目がちの表情が印象的ですが、撮影の間の雰囲気は?

 ★香取 (「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の)両津勘吉の時は、けっこうにぎやかだったんですが、今回は撮影の間も静かな雰囲気でいました。

 -脚本を見た時と実際に撮影に入ってからの印象は?

 ★香取 脚本だけで読み取れなかった部分、映像になった時の変化っていうのは、今まで僕がやらせてもらった中で一番大きかった。映像の迫力というか、撮影現場で新たに感じる部分が大きい作品でした。映画愛にあふれる白石組の現場でした。

 -白石監督の作品に出ることをどう感じていましたか。

 ★香取 僕は白石監督は存じ上げていませんでした。「日本で一番悪い奴(やつ)ら」に出た綾野剛さんが自分の番組にゲストで来てくださった時に見たのがきっと最初です。ご一緒できるかもしれないっていう時に「凶悪」を見て、「あれ、これとんでもない監督」(笑)。その後、今から会う、という前に劇場で「孤狼の血」。映画は好きなので、白石監督を知らなかった自分が残念でした。その監督の最新作に入れて本当にうれしいです。

 -白石監督は香取さんを「日本のトップアイドルでありトップ俳優」と評されていますが。

 ★香取 今回に限らずいつもそうなんですけど、演技する時に自分の中から何かを出すというよりも、監督に見つけてもらって、監督の指示通り、こうして欲しい、っていうことをその場、その現場でやっていくという感じです。今回、「あまり見たことがない香取慎吾だ」とみなさんが言ってくれるのは、白石監督があまり見たことがない僕を僕の中から出してくれたんだと思います。

 -白石監督が「(郁男の恋人の娘を演じた)恒松祐里さんが香取さんをリードしていることもあった」と話していましたが。

 ★香取 ほんとに引っ張ってくれました。彼女はカットがかかって終わった瞬間に「あー緊張した」って時々言ってたんですけど、「え、今のどこが?」という感じ。自分が19歳の時と照らし合わせたら、こんな演技はできない、っていうぐらいに素晴らしかった。ほんとこれからが楽しみです。

 -舞台は宮城県の石巻。物語の底流に東日本大震災が大きく横たわっています。

 ★香取 ボランティア活動などで被災地を訪ねたことはよくあるのですが、震災がからんだ物語に出たことはまだありませんでした。脚本を見た時は「被災地をエンターテインメントの舞台にしてもいいのだろうか」とも思いました。でも、撮影に行って、石巻の人が受け入れてくれて。やって良かったと思っています。

 白石監督の作品というと、「血が飛び交う」というイメージがあるかと思うのですが、監督自身がおっしゃっているように、白石作品の中でもヒューマンドラマなんです。人々の心の絆だったり、優しさだったり、苦悩があふれています。見終わった時には自分の人生と合わせて、みんなで話し合えるような映画になっていると思います。別に「凶悪」や「孤狼の血」を見て予習していなくても大丈夫です(笑)。

 ▼かとり・しんご 1977年1月31日生まれ。横浜市出身。88年から2016年まで活動していたアイドルグループSMAPの最年少メンバー。04年のNHK大河ドラマ「新選組!」では主役の近藤勇を演じる。映画は「座頭市 THE LAST」(10年)や「人類資金」(13年)などにも出演。「凪待ち」は福岡市の中洲大洋劇場などで上映中。「凪」には白石監督の「被災地・東北の人たちの心に平穏が訪れ、波立っている社会にちょっとでもなぎが訪れてほしい」という願いが込められている。

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