年金「安心」政策 批判合戦より実効性競え

西日本新聞 オピニオン面

 「人生100年時代」に向けて、現行の公的年金制度などをどう見直していくか。参院選では、この命題が大きな争点に浮上した。少子高齢化が進む中、中高年者は老後に不安を抱き、若い世代の負担感、閉(へい)塞(そく)感も増している。与野党は互いの批判合戦に陥らず、社会保障の在り方を真剣に論じ合ってほしい。

 年金だけでは老後資金が2千万円不足する-。金融庁金融審議会が先月まとめた報告書は、こんな試算を示して資産形成への投資などを促す内容だった。国民の不安を呼び、通常国会終盤でクローズアップされた。

 老後の暮らし方は人それぞれ異なり、報告書の試算は一つのモデルケースを示したにすぎない。しかし、資産や職がない人はどう生活するのか。投資と言われても、そう簡単な話ではない、という人も多いはずだ。

 麻生太郎金融担当相は、報告書について「政府のスタンスとは異なる」と受け取りを拒んだが、それも無責任な姿勢として批判を浴びた。

 参院選では、与党が現行の年金制度維持は可能とした上で「厚生年金の適用対象者の拡大」「受給開始時期の選択肢の拡大」などを掲げる。野党側は「大きな蓄えがなくても安心できる社会」(立憲民主党)を唱え、世帯収入に応じて医療や介護の負担額に上限を設ける「総合合算制度」などを提起している。

 与野党双方は、それぞれの主張の実効性や財源の裏付けなど実現性を競い、有権者に詳しく説明すべきだ。

 政府は、70歳までの雇用を企業の努力義務とする方針も打ち出している。働く意欲のある高齢者には社会の支え手になってもらい、労働力の確保や社会保障費の抑制につなげる狙いだ。

 ただし、世代交代の遅滞、人件費増に伴う若い世代の賃金水準低下などを懸念する声もある。年金問題を考える上では、こうした高齢者雇用の在り方や、それが若い世代に与える影響なども踏まえた議論が必要だ。

 厚生労働省の2018年国民生活基礎調査によると、高齢者世帯のうち所得が公的年金・恩給だけという世帯は51・1%を占めた。生活が「苦しい」との回答は高齢者世帯で55・1%、全世帯で57・7%に達し、暮らしの不安が社会全体に広がっている実態もうかがえる。

 老後の安心は、若い世代の活力の上に成り立つ。その活力を維持する施策も欠かせない。社会保障は全世代にまたがるテーマだ。各党の主張を見極めるとともに、私たち有権者も国の現状と未来を深く見据え、「1票の選択」に臨みたい。

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