抜本的な解決に疑問残る 梶原昭博氏

西日本新聞 オピニオン面

北九州市立大 情報メディア工学科教授梶原昭博氏 拡大

北九州市立大 情報メディア工学科教授梶原昭博氏

◆高齢者の限定免許

 交通事故死亡者は1970年の1万6765人をピークに、シートベルトやエアバッグなど衝突安全技術によって昨年は3532人にまで減っている。政府は「交通安全基本計画で2021年までに道路交通事故による年間死者数を2500人以下にする」という目標を掲げ、不注意等のヒューマンエラーや身体機能の低下などに起因する事故を未然に防止するための運転支援システムの開発・普及に取り組んでいる。

 近年、相次ぐ高齢ドライバーによるアクセルやブレーキペダルの踏み間違いなどによる事故の報道で、国民の関心が高くなっている。政府は、高齢ドライバーによる事故多発を受けて「安全運転サポート車」(自動ブレーキ機能を搭載した「サポート車」と、自動ブレーキに加え踏み間違い時の加速抑制装置を備えた「サポート車S」がある)限定免許の導入を検討している。しかしながらその実効性に少し疑問が残る。

 例えば、高齢ドライバーの「ペダルの踏み間違い」による急発進や急加速事故の要因として身体機能の衰えがあるだろう。だが、それ以上に老若男女を問わず、慌ててパニックに陥って事故を引き起こすケースのほうが多い。限定免許の導入によってある程度の事故は減るだろうが、事故が大きく減ることはなく、抜本的な解決策にはならないと考える。

 このまま高齢者向けの限定免許が導入されると、「サポート車」を購入できない、または「サポート車S」に対応できない高齢者は運転を断念せざるを得なくなり、公共交通機関が衰退している地方や過疎地域では深刻な問題となる。一方で、政府が進める「高齢者の就業促進」や「人生100年時代構想」などとの整合性が取れているとも思えず、包括的な高齢者対策の視点から実効性のある対策が必要である。

 私たちも、繰り返し報道される高齢ドライバーの事故にミスリードされないように気をつける必要がある。地域社会の新しい移動手段として期待されている自動運転レベル4(高度運転自動化)の実用化までには数年かかるが、それまでの間の高齢ドライバーの在り方や地域社会における移動手段は緊急の課題であり、そこまで踏み込んだ政府の緊急対策案を期待したい。

   ◇    ◇

 梶原 昭博(かじわら・あきひろ)北九州市立大 情報メディア工学科教授 1954年生まれ、福岡県飯塚市出身。工学博士。茨城大工学部教授を経て、現職。車載レーダーや自動運転、高齢者見守りセンサー技術の研究開発に取り組む。

PR

PR

注目のテーマ