拘束4年 弁護士激変 中国、人権派一斉連行事件 妻が初面会 虐待を懸念 「表情なく、ロボットのよう」 

西日本新聞 国際面

 【北京・川原田健雄】中国で人権派弁護士らが一斉に拘束された事件から9日で4年。国家政権転覆罪に問われ、実刑判決を受けた弁護士の王全璋さん(43)は6月末、収監先の刑務所で4年ぶりに家族と面会したが「喜んだ表情も見せず、ロボットのようだった」と妻の李文足さん(34)は西日本新聞の取材に明かした。面会中、突然怒鳴り声を上げるなど以前の温厚な人柄が一変したといい、李さんは当局による虐待への懸念を深めている。

 李さんは6月28日、長男(6)や王さんの姉と一緒に山東省臨沂市の刑務所を訪れた。面会室に入るとガラス仕切りの向こうに王さんが座っていた。夫はやつれて老け込み「別人に見えた」。外見以上に驚いたのは久々の再会にも表情一つ変えない冷淡さだった。

 会話は受話器を使って行われた。「普段は何を食べているの? 部屋はどんな感じ?」と尋ねると、夫は「おいしい物を食べている。住環境もいい」と刑務所暮らしの素晴らしさを繰り返した。違和感を覚えた李さんが「今日は何を食べたの?」と具体的に聞くと「おいしい物だ! おまえは刑務所に入ったことがないから分からないんだ!」と急に大声を上げた。「父さん、愛しているよ」と言う長男にも「私も愛している」と素っ気なく返すだけで笑顔すら見せない。

 王さんのそばには当局者が張り付き、録画用カメラが設置された。終始落ち着かない様子で「おびえて見えた」。王さんの手元には1枚の紙があった。内容は確認できなかったが「当局の指示書通りに答えていたに違いない」と李さん。

 王さんの顔や手は異様に黒ずんでいた。理由を聞くと「毎日、日に焼けているから」と説明した。だが、しばらくすると「あまり日光に当たっていないので毎日カルシウム剤を飲んでいる」と話した。内容の矛盾には気付かない様子だった。拘束された他の弁護士の中には「高血圧の薬」を強制的に毎日飲まされて記憶が曖昧になったり、内臓に障害が出たりした人もいた。李さんは「どんな薬を飲まされているか分からない。早く治療を受けさせないといけない」と心配する。

 李さんは当局の不当な拘束に対し抗議活動を続けてきたが、王さんは「これ以上、何もしないでくれ。面会にも来るな」と訴えた。

 「警察が抗議活動の動画を見せて妻も拘束するぞと脅したんだと思う」。こみ上げる怒りを抑えながら李さんは夫に伝えた。「誰も面会の権利は奪えない。また必ず会いに来るから」

 30分の面会は喜びよりも夫の変貌に心が痛んだ。「拘束経験のある弁護士に何人も会い心構えはできていたのに、実際に会うと胸が張り裂けそうだった」。李さんは言葉を絞り出した。

 王さんは1月に懲役4年6月の実刑判決を受けた。李さんによると、拘束期間を差し引けば来春にも出所できるはずだという。李さんは「真に法律に基づいて対応するよう当局に抗議し続ける」と語った。

【ワードBOX】人権派弁護士らの一斉拘束

 2015年7月9日、中国で人権派弁護士や民主活動家らが国家政権転覆容疑などで一斉に拘束され始めた。「709事件」とも呼ばれる。香港の人権団体によると、昨夏までに少なくとも321人が取り調べを受けた。当局は「弁護士らが反政府感情をあおった」と主張するが「政治的弾圧」との見方が根強い。王全璋氏は非合法の気功集団「法輪功」メンバーの弁護や土地を奪われた農民の支援に関わっていた。

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