筑後川支流の内水氾濫 濁流、排水力の最大10倍 水門設備に限界 早期避難重要 西日本豪雨1年

西日本新聞 一面

 昨年7月の西日本豪雨から1年。福岡県久留米市と周辺で発生した筑後川支流の大規模な内水氾濫について、あふれた6支流の被災時の流量が県への取材で分かった。当時、増水した筑後川からの逆流を防ぐため支流の水門は閉鎖されたが、流れ込んだ雨水の量はポンプによる排水能力の3~10倍(推定)に達していた。気候変動による豪雨で浮き彫りになる「ハード防災」の限界。識者は「現実的な対策は早期避難だ」と訴えている。

 西日本豪雨では広範囲に強い雨が続き、筑後川本流と支流の水位が同時に上昇。久留米市周辺では7月6日午後から7日にかけて、6支流の水門を閉めて逆流を防ぐ一方、ポンプによる排水能力を超えてはけ口を失った支流は内水氾濫を起こし、田畑や市街地に流れ込んだ。

 気象庁によると久留米市の7日午前2時20分までの48時間雨量は383・5ミリと観測史上最大を記録。県の推計では、あふれた6支流の被災流量は最大で大刀洗川約250トン▽山ノ井川約170トン▽陣屋川約140トン▽金丸川約100トン▽下弓削川約85トン▽江川約30トン(いずれも毎秒)。一方、排水ポンプの能力は大刀洗川27・2トン▽山ノ井川23・2トン(同)などだった。

 6支流のうち、山ノ井川は浸水対策が進むが、残る5河川の対策は「検討中」。小松利光・九州大名誉教授(河川工学)は「被災流量を見るとポンプ増設だけで解決できないのは明らか。また中小河川は数が多く、すべてに治水対策を行うのは困難」とみる。ポンプの能力を上げると、筑後川本流の氾濫リスクを高めてしまう恐れもあるという。

 県への情報公開請求で入手した資料によると浸水深は最大で1・6メートル。民家約2千棟が床上、床下浸水した。事業所などを含む300棟以上で浸水深が1メートルを超え、命に危険を及ぼす水位だったことも判明した。

 当時は内水氾濫につながる水門閉鎖を周知する仕組みがなく、人的被害はなかったものの住民たちにとって浸水は不意打ちだった。このため国、県、市はインターネットや広報車による水門閉鎖の周知を決めた。

 小松氏は、西日本豪雨で浸水深が5メートルに達した岡山県倉敷市真備町を例に「浸水深2メートル程度までは2階に逃げれば十分だが、真備町では水に浮いた家具に妨げられて階段にたどり着けず、1階で亡くなった人が多かった」と指摘。「普段から『垂直避難』できる高い場所を探しておくことが生死を分ける」と訴える。

 その上で「本流との合流部に水門やポンプが設置されている河川には内水氾濫の恐れがある。六角川が流れる佐賀平野など、同様のリスクがある低平地は全国にある」と注意喚起している。

【ワードBOX】内水氾濫

 通常は河川の水を「外水」、河川に注ぐ用水路や排水路などの水を「内水」と呼び、排水処理の能力を超えてあふれた状態を「内水氾濫」と呼ぶ。大きな河川と支流との関係では、大河川が「外水」、支流が「内水」となる。西日本豪雨では、筑後川と支流の合流部の水門を閉鎖したため、支流の「内水」が氾濫。堤防からこぼれ出すように浸水するため、外水氾濫のように流れは激しくないが、水位が急上昇することがあり注意が必要だ。

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