景気の現状 アベノミクスの総決算を

西日本新聞 オピニオン面

 安倍晋三首相が、6年半に及ぶ第2次政権の実績として真っ先に挙げるのが経済の再生だ。消費税率の10%への引き上げを10月に控え、看板の経済政策「アベノミクス」の成否についての評価も参院選の争点となる。

 政権発足と同時の2012年12月に始まった景気の拡大期間は今年1月、74カ月を迎えた。通常国会での施政方針演説で首相は「アベノミクスは今なお進化を続けています」と語り、茂木敏充経済再生担当相が翌日、景気拡大は「戦後最長になったとみられる」と見解を示した。アベノミクスの絶頂期は、この頃だったかもしれない。

 中国向け輸出が大幅に減るなど、米中貿易戦争の影響が表れ始めた。その後、1月の景気動向指数では景気の基調判断が「下方への局面変化」、3月は「悪化」と引き下げられた。経済の現状を把握するためのこの指数で、景気が後退した可能性が高いことを示す表現が使われたのは6年2カ月ぶりで、5月は「下げ止まり」となった。

 この間、政府の景気に関する公式見解である月例経済報告は「緩やかに回復」を維持している。総合的な判断との説明だが、景気は一進一退で日本経済は険しい状況に置かれている。

 6月19日の党首討論でも興味深いやりとりがあった。安倍首相は、6年間で正社員が150万人増え、年金積立金の運用益は44兆円で民主党政権時代の約10倍だと成果を誇示した。立憲民主党の枝野幸男代表は、民主党政権下の実質経済成長率は平均1・8%、現政権下は1・1%で「これが客観的な総合成績」と切り返した。首相は名目成長率が実質成長率を下回る時期の数値は「デフレ自慢にしかならない」と反論した。

 数字の見方で評価は変わる。

 自民党の政策パンフレットには雇用改善を示す文字が並ぶ。有効求人倍率は初めて全都道府県で1倍を超え4月の1・63倍は約45年ぶりの高水準、この春の若者の就職内定率は過去最高水準-。これらは、少子高齢化で生産年齢人口が減り、構造的な人手不足に陥っていることの裏返しと見ることもできる。

 円安ドル高で輸出企業を中心に企業業績は好調で18年度の国の税収は過去最高を更新した。その半面、実質賃金は伸びず個人消費に勢いはない。株価上昇など経済成長の恩恵に浴する富裕層と、そうでない人の格差はむしろ広がっていないか。

 選挙では与野党とも自らに都合のいい数字を強調するのが常ではある。暮らしの実態、実感にも照らして、アベノミクスを総決算する機会にしたい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ