【九州出身の2リーダー】 徳増 浩司さん

西日本新聞 オピニオン面

徳増浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーW杯2019組織委事務総長特別補佐 拡大

徳増浩司(とくます・こうじ)さん=ラグビーW杯2019組織委事務総長特別補佐

◆覚悟持った改革に期待

 いよいよ開幕まで70日余りとなったアジア初開催のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。真っ最中の博多祇園山笠では、W杯をあしらった飾り山が披露され、世界三大スポーツイベントの機運盛り上げに一役買っている。一方、来夏開幕の東京五輪では、入場券の販売が開始された。「スポーツのゴールデンイヤー」を告げる二つの国際大会への期待と熱気が高まる中、6月下旬に、両大会を統括する二つの国内団体で異例のトップ交代があった。

 新トップの一人は、日本ラグビーフットボール協会の会長に就任した森重隆氏。もう一人は日本オリンピック委員会(JOC)の会長に就いた山下泰裕氏。ともに九州出身者である。山下氏に関しては、九州学院が金鷲旗高校柔道大会で優勝した1974年に、たまたま私がスポーツ担当記者として取材したこともあり、時代の流れを感じた。

 森氏は就任時の記者会見で「覚悟を持ってスピードある変革に臨みたい」と宣言し、山下氏も「スポーツ界の再建」の覚悟を語った。この2人の就任会見で共通した「覚悟」という言葉が、私の胸に大きく響いた。それは、日本スポーツ界のこれからの可能性とともに、現況に対しての深刻な危機感という意味があるからだ。

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 まちづくり支援に取り組む木下斉氏は、著書の中で、福岡市が現在のようなわが国有数の地方都市になった原動力として「覚悟を持った」5人のリーダーが、大きな変革をもたらしたことを挙げている。その5人とは、西日本鉄道につながる電気軌道事業に尽力した渡邉與八郎氏、九州電力・西部ガスの礎を築いた松永安左エ門氏、西日本シティ銀行の源流の一つである福岡相互銀行を創立した四島一二三氏、めんたいこ製造販売業「ふくや」の創業者・川原俊夫氏、そして元福岡市長の進藤一馬氏だ。

 木下氏の表現を借りれば、彼らに共通していたのは「100人の合意よりも1人の覚悟」。それは「責任の所在を明らかにし、実行のリスクも自ら負う覚悟のある人」による改革だったという。

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 JOCの山下会長誕生は、前会長の竹田恒和氏が2020年東京五輪招致疑惑の対象になったことがきっかけとなり、就任会見でも「ガバナンス(組織統括)、コンプライアンス(法令順守)、インテグリティー(誠実さ)の強化に取り組む」と所信を表明した。13年に発覚した暴力指導問題を契機に改革に取り組んでいる全日本柔道連盟(全柔連)の会長も兼務するが、こちらに対しても「全柔連はまだ改革の半ば。その歩みは止められない」と言い切った。

 一方、日本ラグビー協会の森会長は福岡高校から明治大学、新日鉄釜石(現釜石シーウェイブス)で活躍した日本ラグビー界のレジェンドだ。組織の若返りを図り、意思決定のスピードアップを強調した。W杯直前のタイミングとはいえ、体制刷新の意義は大きい。

 九州には開催都市が福岡、大分、熊本の3会場ある上、キャンプ地も公認と事前を含めれば九州一円に及び、九州全土がラグビーのメインステージになる。そして、まさに今この瞬間、日本代表候補が宮崎で強化合宿を続けている。森会長はさっそく宮崎合宿に足を運び、選手らを激励するなど行動力を示した。森氏は九州のパワーも結集し、日本のラグビー界をリードしていくことになるだろう。

 JOCの山下会長、日本ラグビー協会の森会長。国際スポーツの祭典を前に、九州出身の新リーダー2人が打ち出した覚悟と、わが国スポーツ界改革への期待に胸が躍る。あとは実行あるのみだ。

 【略歴】1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率い全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務。アジアラグビー会長を経て現在は同名誉会長。

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