海難事故SOS即発信 携帯通信機を九大院生ら開発 祖父の死契機

西日本新聞 社会面

通信機器が入ったヨビモリの試作品を首から下げる千葉佳祐さん(右)とスマートフォンを持つ成田浩規さん。ヨビモリを引っ張ると登録したスマホに通知が届く=福岡市西区 拡大

通信機器が入ったヨビモリの試作品を首から下げる千葉佳祐さん(右)とスマートフォンを持つ成田浩規さん。ヨビモリを引っ張ると登録したスマホに通知が届く=福岡市西区

 操業中の海中転落事故などから漁師を守ろうと、九州大学の学生たちが、首から下げる携帯型通信機を使った新たな通報システムの開発に取り組んでいる。主導するのは、漁船転覆事故で祖父を亡くした北海道出身の九大大学院1年、千葉佳祐さん(24)。「海で亡くなる人を少しでも減らし、本人も家族も守りたい」と、来年の事業化を目指す。

 漁師だった千葉さんの祖父は44年前、北海道羅臼町沖で遭難し、帰らぬ人となった。一家の大黒柱を突然失った祖母と母は長年、貧しい暮らしを強いられた。その話を聞いて育った千葉さんは、遭難直後に迅速に救助が始められるシステムをつくれば「女手一つで母を育ててくれた祖母への恩返しにもなる」と考え、友人で九大芸術工学部3年の成田浩規さん(22)らと開発に乗り出した。

 昨年秋に開発を始めたシステムは、主に沿岸漁業を想定。海中に転落するなどした際、首から下げた通信機を引っ張ると信号を発し、あらかじめ登録したスマートフォンに安否確認要請や位置情報を通知する仕組み。すぐに捜索や海上保安庁への通報ができるように工夫した。通信機は約1カ月間、信号を発し続ける。「呼ぶ」と「お守り」との意味を足して、「ヨビモリ」と名付けた。

 着水すると信号を発したり、救命胴衣に付けたりするタイプの通信機は既にあるが、誤作動を嫌ったり、面倒くさがったりして、使わない漁師も多い。ヨビモリは、抵抗なく身に着けてもらえるよう小型化するほか、夜間でも発見しやすいよう発光ダイオード(LED)ライトも付ける予定だ。

 ヨビモリのアイデアは、九大や北九州市、米国などのアイデアコンテストで入賞。千葉さんたちは、その賞金などを開発費に充てている。今秋にも福岡市漁業協同組合姪浜支所に試作機数十個を配布して実証実験を始める予定という。

 同支所で開発に協力する漁師、野上洋平さん(40)も7年前に博多湾での漁業中の事故で父を亡くした。博多湾では夜間の漁が多いといい、野上さんは「若い世代も安全に働けて、家族が安心して漁に送り出せるようにしてほしい」と千葉さんたちの挑戦に期待を寄せている。海上保安庁によると、2017年の漁船の事故による死者・行方不明者は全国で82人だった。

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