国際鉄道期待が先行? タイ-カンボジア45年ぶり計画

西日本新聞 国際面

 タイとカンボジアが、両国を約45年ぶりに連結する「国際鉄道」計画を進めている。連結鉄道はもともと1942年に運行が始まり、カンボジア内戦の影響で74年に停止。両国関係も近年まで領土問題を巡って摩擦が続いたが、タイ軍事政権下で一気に改善。4月に両首相が鉄道開通の調印式典を開き、内外にアピールした。「関係強化の象徴」(タイ地元紙)とされる現地を訪ねると、鉄道整備より周辺地域の開発が活発で、期待先行の感もある。(カンボジア・ポイペトで川合秀紀)

 今月1日、タイ国鉄が運用を始めた新駅「バンクロンルック国境駅」。カンボジアとの国境から約300メートルにあり、既存路線を約6キロ延伸した。首都バンコクから約260キロ、運賃49バーツ(約170円)。約5時間半後に真新しい国境駅に到着すると、ホームと直結して出入国手続きができる施設も完成していた。

 両国は2015年、鉄道連結に合意。既存の線路の改修や駅の建設などの準備を進めてきた。次の駅は国境を挟んで約1キロ、カンボジアのポイペト駅。プノンペンから線路がつながっており、最終的に両国の首都が鉄道で連結されることになる。だが、現地に行くと「開通」には程遠いと感じた。

 大きな市場目当ての買い物客でにぎわうタイ側新駅近くで出国手続きを終え、歩いてカンボジアに入ると、すぐに線路が続いているのが見えた。だが列車は走っておらず、線路上に無数のバイクが駐車。さらに歩くと、線路を遮る形で直径約30メートルのロータリー広場があり、広場の敷地に何かを建設していた。

 何の説明もない完成予想図らしき絵を見ると、2層式の建物。上部は豪華な仏教寺院で、その真下をくりぬいて鉄道と線路が通る‐。壮大かつ複雑なデザインだが、工事は初期段階のように見える。いつ完成するのか、通行人に聞いても分からなかった。

 ポイペト駅は完成していたが誰もおらず、調印式典で使われた列車がホームに停車していた。プノンペンと約10時間で結ぶ国内の路線も、地元メディアが最近、「政府と運行会社が契約交渉中」として営業の遅れを指摘。タイとカンボジアともに、車より大幅に時間がかかる鉄道の利便性に疑問を投げかける報道すら出始めている。

 ただ、ポイペトではあちこちで建設工事が進められていた。主役はカジノだ。

 ポイペトはカジノの街として知られる。カジノが禁じられているタイから人々が訪れ、現在は国境エリアにホテル一体型のカジノが20施設程度、集積。約20年営業するカジノ施設の警備員(40)に聞くと「ここ数年で倍くらいに増えた。中国人も増えているから、今も新しいカジノがいくつか建設中だ。鉄道がつながったらもっと増えるかも」。

 ポイペトで子ども向け教育支援活動を続けながら、食堂を営むNPO法人代表の古川沙樹さん(35)は現在、交流施設の建設用地を探しているが、相次ぐ再開発によって「土地や家賃が高騰しているのを日々実感する」と語る。

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