戦争とは何か――自衛隊出身の作家による迫真のヒューマンドラマ

西日本新聞

 朝鮮人の朴と日本人の吉永。本作は、戦争に翻弄される二人の若者を主人公にした戦争小説である。舞台は1939年から1945年の朝鮮半島と日本本土、さらに2018年の甲子園だ。日韓併合時代と現在をうまくクロスカッティングさせ、緩急のある物語に仕上がっているからか、重たいテーマながらもページをめくる手を止めさせない力を持つ作品である。

 1939年、平壌一中の一番セカンド・朴と、二番ショート・吉永の二遊間コンビは、甲子園を目指していた。冒頭は若き日の二人の出会いと野球に打ち込む日々を、朴の妹の雪松(ソルソン)や吉永の幼なじみの本城世枝子も加え、描いていく。やがて、時代は戦争へと進み、巨大な力は人々を容赦なく押し流していく。朴は少年飛行兵となり、吉永は陸軍予科士官学校に進学する。

 東南アジアの撃墜王と称されながらも、自分の在り方に苦しむ朴。特攻を命令する立場になり、苦悩する吉永。彼らを中心にして戦争の実相を容赦なく暴いていく。クライマックスでの吉永のある決断は、読者に大きな衝撃を与えることだろう。その後、重苦を背負って生きる朴の姿に胸が痛むが、その衝撃が、ラストシーンの感動や救いへとつながっていく。

 自衛隊出身の作者が新たに切り拓いた渾身(こんしん)の作品だ。平成の時代、日本には戦争がなかった。それは、日本国民が戦争の悲惨さを真剣に考え対応してきたからだろう。今を生きる人々は、二人のように戦争で運命が大きく変わった人々が実際にいたことを決して忘れてはならないのだ。作中、朴は朝鮮人としての差別を受けながら「日本人より日本人らしい」と称賛されるのだが、これは、そうした人々が実際にいたことを意味している。そうしたことも今一度見つめなおしたい。

 令和という新時代を迎えるにあたり、改めて戦争について考えさせる一冊である。平和が当たり前になりつつあるこの時代に、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

 

出版社:双葉社
書名:赤い白球
著者名:神家正成
定価(税込):1,728円
税別価格:1,600円
リンク先:https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24184-6.html?c=30197&o=&

西日本新聞 読書案内編集部

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