「こども宅食」 九州でも続々 孤立防止へ「心の支援」も ふるさと納税の寄付金活用 ひとり親家庭に食品

西日本新聞 くらし面

食品の箱詰め作業で話し合う「おなか一杯便」のメンバー 拡大

食品の箱詰め作業で話し合う「おなか一杯便」のメンバー

 生活に余裕がない子育て世帯に食品を届ける「こども宅食」の取り組みが、九州でも佐賀県などで始まっている。東京都文京区と民間6団体がふるさと納税を財源に、通信アプリのLINE(ライン)で希望者を募る方法で続けており、ノウハウを取り入れて開始。支援に手を挙げにくい人をどう掘り起こし、孤立を防ぐか。試行錯誤を続けている。

●佐賀の2団体始動 長崎、宮崎も

 桃の缶詰に大喜びする中学生。ひとり親家庭の父親は「自分は買いにくいから」と娘用の下着や生理用品を望んだ。6月に初めて配送した佐賀市の市民団体「スマイルキッズ」によると、食品を届けた家庭はさまざまな表情を見せた。

 団体はひとり親家庭や、再婚などで血縁関係のない「ステップファミリー」を支援してきた。こども宅食の方法を教わって始め、ひとり親の12世帯に1戸3千円の予算でコメなどを贈った。スタッフが直接会って届けるのは、悩みを相談できる関係を築くためだ。

 団体のスタッフは自らもひとり親家庭やステップファミリーの当事者。今回、福島めぐみ代表(47)は自分のことを打ち明けて話を聞くと、ある母親に「他の人に悩みを話したことはなかった」と泣いて喜ばれた。当事者だからこそ心を開いてくれたと感じた。

 「食もだけど、心の支援を大事にしたい」と福島さん。スタッフ不足などで対象世帯を大幅に増やせない悩みはあるが、長く食品を届けたいと思う。

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 こども宅食は文京区と民間6団体が2017年10月、児童扶養手当や就学援助を受ける区内の家庭を対象に始めた。食品は区に集まったふるさと納税の寄付金や、食品メーカーの寄付で賄い、6団体の一つである運送会社が配送している。

 利用者はラインで申し込むと運送会社から食品が届くため、周囲に困窮世帯と知られにくい。人目を気にする人も申し込みやすい。ラインでやりとりを続ければ、親子の課題も分かるという。利用は当初、区内で150世帯を見込んだが、現在は595世帯に増えた。

 取り組みを全国に広げようと、6団体は18年、実施を希望する団体や自治体を募集。地域の課題解決のため、NPOなどの市民社会組織(CSO)を誘致している佐賀県を第1弾に選び、ノウハウや資金を提供する一般社団法人「こども宅食応援団」を佐賀市に設立した。実施団体を公募し、スマイルキッズなど2団体に決まった。

 佐賀を拠点に選んだのは、県がふるさと納税の受け付けで独自ルールを設けている点にもあった。個人や企業が寄付する場合、使い道を県指定のCSOに限定でき、事務経費5%を除いた95%がCSOに入る。CSOが、ふるさと納税制度を使って活動資金を集められる仕組み。応援団はこの県指定を受け、ふるさと納税の寄付金を2団体に分配して、食品購入などに充ててもらっている。

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 佐賀のもう一団体は、北川副小(佐賀市)の学校運営協議会内にある「おなか一杯便」。校区の13世帯に2カ月に一度、1戸5千円の予算で届けている。

 現在はQRコードを載せたチラシを配り、携帯電話で申し込んでもらっている。地域の寄付金を財源にしていたが継続して集めるのが難しく、ふるさと納税を活用できるよう県からCSO指定を受け、さらに応援団の実施団体にも選ばれた。応援団から入る資金は、利用者アンケートに充てることを計画している。

 課題は配送を運送会社に委託しているため、利用者との接点が少ない点。団体委員長の大坪裕樹さん(53)は「悩み相談までできるといいが、事情を知られたくない人もいると思う。どう接するか、距離感が難しい」。アンケートでニーズをつかみ、ラインを使うノウハウで関係を築けないかと考えている。

 応援団によると、全国では宮崎県三股町や福井県越前市、新潟市でも独自にこども宅食が始まっている。三股町では昨年4月の開始後、利用が当初の2倍近い32世帯に増えた。長崎市や宮崎市の団体も開始予定という。

 応援団の事務局を務める認定NPO法人「フローレンス」(東京)の担当者は「子ども食堂の実施団体が、こども宅食を始めたいと希望するケースもある。ノウハウを広めて多くの世帯を支援したい」と話している。

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