新時代を託す 日田市長選(3)公共交通 「地域実情に合う手段で」

西日本新聞 大分・日田玖珠版

 「代行バスを駅まで乗り入れてほしい」。6月末、日田市大鶴地区で開かれたJR日田彦山線の説明会。沿線住民の一人、小田信子さん(83)=同市夜明上町=は市幹部に窮状を訴えた。

 日田彦山線は九州豪雨で一部が不通となり、今もJRによる代行バス運行が続く。小田さん宅は不通区間の駅近く。通院や買い物などで毎日のように鉄道を利用していたが、代行バスの停留所は、歩いて30分の国道に置かれた。タクシーの利用は増え、その額は月1万5千円ほど。「今月はいくらかかったか。計算する気にもならない」とため息をつく。

 鉄道が被災した地域だけではない。過疎化、高齢化が著しい中、周辺部を中心に、公共交通の維持は市の大きな課題となっている。

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 市は乗合タクシーの運営委託や路線バスを運行するバス会社への補助など毎年1億円以上を使い、市民の足の確保に努める。利用者減などで、維持費は年々膨らむと見込まれることから、市は昨年「地域公共交通網形成計画」を策定。持続可能な公共交通ネットワークづくりを目指して対応を進めるが「税金を使っている以上、利用人数に応じたサービスにせざるを得ない」というのが実情だ。

 今年4月、路線バスを運行する日田バスは運転手不足を理由に、利用者が少ない10路線で減便などを実施。夜明循環線など同市夜明地区を通る路線は1日7便を4便に減便。このうち2便は時刻変更も行われた。

 利用者の不満はくすぶる。夜明関町の女性(75)は週1、2回、通院や買い物などに使っていたが2週間に1回に利用を減らした。帰りのバスまでの時間が、これまでより2時間遅い4時間半になったからだ。急ぎの用事があればタクシーも使うが「年金生活者には厳しい。買い物に行かないわけにもいかないし」。

 別の女性(77)も利用を減らし、痛む腰のリハビリも我慢する。「乗る人が少ないのは確か。でも効率だけで弱者を切り捨てないで」と訴える。

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 国土交通省交通政策審議会の委員も務める加藤博和名古屋大教授(交通政策)は「過疎地では、路線バスのような定時、定路線の手段より、利用者の要望に合わせて運行するオンデマンド交通が効果的な場合が多い」と指摘する。

 タクシーのように発着地や時間を指定できて低料金。利用者が少ない地域では、無駄な運行を減らせるため経費節減につながることがある。市も一部地域でオンデマンド交通の一つ「乗合タクシー(予約制)」を運行中で、人手不足に悩む運行会社の負担軽減にもつながっている。市は「要望があれば他地域でも導入を検討する」と前向きだ。

 公共交通の維持で住民が自由に外出できると、地域の生活の質を高めることにもつながる。「地域の実情に合った手段で運行することが大切。だからこそ行政の押しつけではなく、住民、通学に利用する高校生や保護者、高齢者など幅広い人から意見を聞くべきだ」と加藤教授は力を込める。

 市が策定した計画には「私たちの暮らしを守る地域公共交通づくり」との基本方針が掲げられている。厳しい財政状況をにらみながら、地域ニーズにどこまで応えられるか。市の模索は続く。

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