「朗読ではないと思います」と書かれたはがきをいただいた…

西日本新聞 オピニオン面

 「朗読ではないと思います」と書かれたはがきをいただいた。「あのお嬢さんは真っすぐ前を見ていました。原稿を読む、ではありませんでした。暗唱されておりました」

▼宛先は本紙夕刊1面「がめ煮」。6月24日のその欄は<沖縄戦「慰霊の日」の戦没者追悼式で、平和の詩を今年は小学6年生が朗読した>と書いていた

▼式次第には「『平和の詩』朗読」とあった。自作の詩「本当の幸せ」で朗読者に選ばれた兼城小の山内玲奈さんを、新聞の多くは「朗読した」と報じた。地元紙は「朗読」としつつも「一度も原稿を見ることなく」などと伝えた。沖縄県外の読者の中には、はがきの人と同様に感じた人がいたかもしれない

▼新聞は事務的に報道してはいませんか、そのような思いが、万年筆で書かれた文面からは読み取れた。名前、住所はなく「56年間 西日本新聞」とだけ書き添えられていた

▼平和の詩の少女を見ていて涙が出たそうだ。「政治家は見習ってほしい。官僚が書いた答弁を早口で読むだけですから」とも。はがきを書かずにいられなかった気持ちが一層よく分かる気がした

▼読み返して思い出した。国会で答弁を誤らないよう「役所の原稿を朗読する」と就任直後に言った沖縄北方担当相がいた。官僚の原稿を読み間違えた大臣は珍しくない。そういう人も交じる政権に、沖縄は時に翻弄(ほんろう)されてきた、という国政の現実にも思いは至る。

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