【余生をどこで】(3)サ高住、入居者の重度化に悩み

西日本新聞 くらし面

緊急呼び出しコールを事務室で受ける施設長。館内には入居者見守りのためのカメラも設置している=5日、福岡県福津市の「あすなろ福間」 拡大

緊急呼び出しコールを事務室で受ける施設長。館内には入居者見守りのためのカメラも設置している=5日、福岡県福津市の「あすなろ福間」

 夕食を食堂で終え、入居者がみな自室に戻った午後6時すぎ。ある人が戻ってきて「私、食事したかしら」と尋ねる。日によっては、緊急呼び出しのコールがひっきりなしに鳴る。職員が部屋に駆け付けると、目の前にあるリモコンを「捜して」と言われたことも。夜中に廊下を徘徊(はいかい)したり、部屋で転倒して体調を崩したりする人もいる。

 「入居年数が長くなり、中には認知症の症状が出るなど、介助側の負担が重くなってきているんですよ」。福岡県福津市のJR福間駅から徒歩5分。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「あすなろ福間」(40戸)を運営する一般社団法人「まごころ福祉会」理事長の穂満光男さん(61)は、口元を引き締める。

 ●軽度者向けなのに

 サ高住は、安否確認と生活相談サービスが付いたバリアフリーの集合住宅。ほとんどが賃貸契約で、比較的元気で要介護度の低い人の受け皿として、国が普及を推進してきた。

 夜中も介護などの職員が常駐する特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設と異なり、こうした職員を少なくとも1人配置するよう基準で求められているのは日中のみ。だが-。

 あすなろ福間はオープンから丸7年。入居者の平均年齢は85歳を超え、開設当初の平均要介護度は1未満だったものの、今では2・7。認知症だけでなく、さまざまな疾患を抱える人も出てきた。「入居者に万が一のことがあってはいけないので」(穂満さん)、夜中も職員2人を常駐。巡視も行い、見守りを強化してきた。「でも人件費の負担で、経営的には厳しい面もあります」

 ●「減算ルール」痛手

 月額基本料は家賃や食費、安否確認などの基本サービスや支援費を含めると約13万円。介護保険に基づく介護サービスを利用するには自宅で暮らす場合と同様、入居者それぞれが各事業所と別に契約する。

 まごころ福祉会はサ高住にデイサービス事業所を併設し、車で5分の近隣で訪問介護事業所も運営。両事業所の利用者のほとんどはサ高住の入居者で、この収益でサ高住の運営をしているのが実情だ。国土交通省によるとこうした事業所が併設、または隣接するサ高住は全国で8割に上る。

 ただ国は「入居者にその事業所の利用を強制し、必要以上のサービスを給付しかねない」と“囲い込み”を懸念。同一建物内や同一法人が経営する事業所を一定以上の入居者が利用する場合は、事業所側への介護報酬を一律「減算」してきた。

 介護サービスは、高齢者と契約するケアマネジャーが本人と必要なサービスを相談し、利用先や時間を決める。ケアマネが所属する居宅介護支援事業所と、デイサービス、訪問介護の各事業所の「3点セット」をサ高住が同一法人で経営、利用を半ば強制する施設もあるとされる。同会は入居者のケアマネはすべて外部の居宅介護事業所に委ねてきた。「あらぬ疑念を持たれたくないようにしたいので…」と穂満さん。

 ●負のイメージ重く

 「でも併設のデイサービスを利用してもらうからこそ、職員にとっても入居者にも安心感があるんですけど」。開設当初からの施設長(56)はこぼす。

 サ高住の職員とデイの職員は夜勤者も交えて毎日定時で申し送りの会議を開き、入居者一人一人の様子や健康状態を互いに報告し合っている。「夜眠れず昼夜逆転になっている人には、デイサービスで昼間なるべく起きていてもらうために機能訓練をしたり。同じ事業所で24時間ずっと観察しているから、その人に合った世話もしやすいので」

 入居者の要介護度が重くなれば、サービスを提供する併設事業所への介護報酬も上がる。この5年、全国的には介護報酬目当てで重度者だけを入居させ、併設事業所を利用させてきたサ高住の存在が発覚したこともあり、運営事業者側はサ高住に対する「負のイメージ」にも悩まされてきた。

 国は今後もサ高住建設を推進する方針だが「現場の実態に即してルールを考え直さなければ、今後、サ高住を建てる事業所は増えてこないのでは」。民間任せで「箱」の数は増えた半面、経営面を含め「質」がなかなか定まらないサ高住の未来に、穂満さんは警鐘を鳴らす。


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【ワードBOX】サービス付き高齢者向け住宅
 高齢者住まい法の2011年改正に伴い創設。主に60歳以上が対象。床面積が原則25平方メートル以上▽バリアフリー▽安否確認・生活相談サービスの提供-などの基準を満たした施設が都道府県などに登録する。建設時の補助金や優遇税制があり、登録開始から7年余りで約24万5千戸(19年5月末)に。入居時には敷金が必要なケースが多く、月額利用料は10~30万円。登録物件は情報検索システム=https://www.satsuki‐jutaku.jp/=で閲覧できる。

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