文化審議員、異例の批判 大牟田市庁舎本館の解体方針

西日本新聞 筑後版

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「市民はいろいろな情報を耳に入れて判断してほしい」と話す井形進氏

 国登録有形文化財の大牟田市庁舎本館を解体する市方針に対し、県立九州歴史資料館(小郡市)学芸員で、大牟田市文化財保護審議会委員も務める井形進氏(47)が、7月発行の季刊誌「西日本文化」(西日本文化協会)への寄稿文で、強く異を唱えている。市は「国の文化財である庁舎は市審議委の審議対象ではない」との姿勢だが、市の文化行政に直接関わる識者として異例の批判を展開した。

 井形氏は5人いる審議委員の1人で、西日本新聞のインタビューに対し「見解を公にするのは控えるべきだとも思った」と吐露。ただ、「大牟田の文化向上のために委員を任されている。どこかで発言しないと仕事をしたことにならない」と考え直したという。

 井形氏は、同市が県内で最初に文化財保護条例を制定したことを挙げ、産業だけでなく「生活や文化でも先進的で意識が高い存在だった」と指摘。その上で、市が近代化遺産を前面に押し出した広報戦略を進める一方で、石炭産業で極めた栄華を象徴する庁舎を解体するのは「戦略と矛盾し誇りを汚す」と厳しく批判した。

 さらに市が財政上の理由で解体方針を示している点も「保存する方法はいろいろあると指摘する識者もいる。多くの意見を聞いてみんなで考えるべきだ」と反論。これから造る庁舎は年数がたてば価値が下がるが、本館を今後50年間保存できれば「より価値が上がった財産になる」と訴えた。

 出身は北九州市だが、親類の多くが大牟田市に住むなど縁が深いという井形氏。仏教美術が専門で審議委員は2006年から務める。市民に対して「市の考えと文化財関係者の双方の声を聞いてほしい」と強調。寄稿文では「市民が今後100年を見据え、対話と熟慮をすることを固唾(かたず)をのんで見守りたい」と、市民の判断を尊重する考えを示す。ただ解体が決まれば「文化や文化財の意義や力を(市が)信じていないということなので、このまま居座るのもどうかなと思う」と、委員辞任の決意も明かした。

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