参院選1人区を歩く(1)新潟 自民「忖度」発言で危機感

西日本新聞 総合面

 「まな弟子」の横に立つ「親分」の顔に余裕は見られなかった。選挙戦が始まった4日、麻生太郎副総理兼財務相が真っ先に駆け付けたのは、自身の元秘書で麻生派に所属する自民現職塚田一郎氏の地元だった。

 「ただただ選挙をやるため、勝つためだけ。こういうのを『野合』とか『談合』とか言うんじゃないですか」。マイクを握り、事実上の一騎打ちとなった野党統一候補を批判。新潟県内3カ所で“麻生節”を披露したが、「忖度(そんたく)発言」に触れることはなかった。

 国土交通副大臣だった塚田氏は4月、北九州市の集会に出席。麻生氏と安倍晋三首相の地元を結ぶ下関北九州道路の整備を巡り、両氏の意向を「私が忖度した」と発言した。

 塚田氏は「事実と異なる発言だった」と撤回したが、連日ワイドショーでも報じられ、事実上の更迭に。髪を短く切り、党県連会長も辞したが、地元の自民県議は「参院候補の差し替え論も出た」と明かす。

 塚田氏は2カ月半、建設業界など地元の支持団体へ「おわび行脚」。4日の出陣式の冒頭でも「私の発言によりご心配やご迷惑をお掛けしたことを改めておわびしたい」と頭を下げた。

 だが、今でも支持者からは「髪は丸刈りではなくただの短髪で中途半端だ。謝罪にも誠意が見えない」などの不満がくすぶる。

 田中角栄元首相を輩出し、「保守王国」と呼ばれた新潟だが、改選数が2から1に減った前回2016年参院選は自民現職が野党候補に敗北。17年衆院選では県内6選挙区で自民は2勝4敗と負け越した。

 それが昨年6月の知事選では、与党系候補が野党共闘候補に競り勝った。合言葉は「保守復活の流れを止めるな」。別の自民県議は「塚田さんのためと言っても支援者がついてこない。大義に立たなければ」と漏らす。

 3選を目指す塚田氏もこれまで与野党で議席を分け合ってきたが、今回は初めて1議席を争う。激戦必至な状況で飛び出した忖度発言。政府、与党の危機感は深く、4日の麻生氏に続き、5日は首相、6日は菅義偉官房長官と、いきなり「政権トップ3」が新潟入りするてこ入れぶりだ。

 一方、野党統一候補の無所属新人、打越さく良氏は北海道出身。東京で弁護士活動をしてきた「落下傘」候補だ。立候補表明した5月以降、NPO法人などを回り、支持を訴えてきた。

 新潟駅前での第一声では「上ばかり向いた忖度政治から、共に咲く政治へ」と声を張り上げた。消費税増税反対や年金問題でも政権批判を展開する。

 「なぜこの人が新潟かという疑問がまだ有権者にある」(地元野党幹部)。塚田氏が「地元生まれ」を強調する中、打越氏も街頭で「新潟県弁護士会にも登録した。正真正銘の新潟県民だ」と訴える。

 忖度発言という“敵失”による追い風を受けての戦いに、立憲民主党幹部は「新潟で負けるようでは、他の1人区は全滅する。それぐらい重要な選挙区だ」と息巻く。

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 参院選は21日の投開票に向けて攻防が繰り広げられている。勝敗を左右すると言われる1人区の現場から報告する。

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