参院選1人区を歩く(2)秋田 地上イージス 失態で一転

西日本新聞 総合面

 野党候補のような第一声だった。「防衛省の不誠実な対応は言語道断だ」。4日、秋田市の出陣式でマイクを握った自民現職の中泉松司氏は、公然と政府批判を口にした。

 秋田は2016年の前回、東北6県で唯一、自民が議席を獲得した。だが地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画を巡る防衛省の不手際で一転、強烈な逆風が襲う。

 秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を「適地」とした防衛省調査の誤りが発覚したのが6月初旬。もともとレーダー波による健康被害や攻撃目標になることを懸念していた住民の怒りに火が付いた。さらに防衛省職員が住民説明会で居眠りし、火に油を注いだ。

 秋田は上空を北朝鮮の弾道ミサイルが通過したこともある。政府の失態は配備に理解を示してきた中泉氏を直撃した。「配備容認では戦えない。沈黙しても政府に弱腰だと捉えられかねない」(陣営幹部)。配備の是非を封印し、政府批判に転じた。

 岩屋毅防衛相が地元入りして謝罪したことを「(自民党)国会議員が一丸で抗議したからだ」と言う中泉氏のアピールは苦しい。党本部も察してか、全国から引っ張りだこの小泉進次郎衆院議員を公示日に投入した。自民県議は「秋田が負ければ東北が全滅しかねない」と焦りを隠さない。

 好機が訪れた野党陣営はどうか。統一候補の無所属新人、寺田静氏は第一声で「秋田の子どもたちにイージス・アショアのある未来を手渡したくない」と訴え、配備反対を争点化する構えを鮮明にした。

 寺田氏の夫は秋田が地元で立憲民主党会派の衆院議員寺田学氏(比例東北ブロック)。学氏の父は元参院議員で秋田県知事を3期務めた。秋田で「寺田」の知名度は高い。無所属で政党色を消し、無党派層や保守層の取り込みを狙う。

 「防衛省は住民をばかにしている。今回は野党に入れる」。演習場から約1キロ。高校や福祉施設もある住宅地で、近くの男性(71)はこう言った。別の男性(65)は「政府になめられていると思っている住民は多い」という。

 とはいえ安定政権への支持は厚い。配備計画を「白紙に戻した方がいい」と態度を硬化させた佐竹敬久知事は、中泉氏の出陣式に出席し「いま一番大事なのは政治の安定だ。政治はイージスだけではない。高齢化など地方の課題を解決するには自公政権しかない」とエールを送っている。

 住民からも「寺田さんが当選したところで、本当に配備を止めることができるのか」と懐疑的な声が漏れる。県内では17年、人口が100万人を割り込み、県民に衝撃を与えた。寺田氏自身、配備反対を掲げる一方で、人口減少対策などの訴えにも力を入れ、バランスに腐心する。

 政府の失態に揺れる秋田の攻防。与野党どちらに地域の未来を託すべきか、政権不信のなかで有権者も揺れている。

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