参院選1人区を歩く(3)鳥取・島根 候補者の姿見えない合区

西日本新聞 総合面

 7日朝、鳥取県の山間部を自民現職、舞立昇治氏の選挙カーが駆け巡った。「地方に人が戻る日本をつくらんといかんのです」。マイクを握ったのは自民党元幹事長の石破茂氏(衆院鳥取1区)。選挙カーに舞立氏の姿はなかった。

 鳥取は2016年参院選から、島根県と選挙区が一つになった。「1票の格差」是正を目的に、隣り合う選挙区が合区されたのだ。

 「鳥取・島根」の東西両端は350キロ超。東京‐名古屋間に匹敵する。広大な選挙区に集落が点在し、陣営は「くまなく回るのは現実的に無理」と悩む。

 公示後、初の週末となった6、7両日、3候補とも鳥取県に立ち入らなかった。石破氏が乗る選挙カーに手を振った男性は首をひねった。「今回は石破先生の選挙だったかのう」

 13年に旧鳥取選挙区で初当選した舞立氏にとって、合区での選挙は初めて。最大の課題は島根での知名度向上だ。島根の広さは鳥取の倍ほど。有権者も約10万人多い。名前の浸透には、地元議員の力を借りざるを得ないが、不安も抱える。

 島根は故竹下登元首相らが自民の固い地盤を築き上げた「竹下王国」だ。しかし、4月の知事選で自民分裂選挙になり、県議会は32年ぶりに自民会派が割れた。参院選を仕切るはずの県連幹事長は事実上解任され、参院選の選挙対策本部もつくれない状態だ。

 陣営は「公示前までに島根でのあいさつ回りが足りなかった。選挙中の6割は島根に割く」。

 舞立氏と争うのは、野党統一候補の無所属新人、中林佳子氏。1979年、衆院選島根全県区で共産党公認で初当選し、通算4期9年務めた。年金問題や消費税増税反対などを訴え、立憲民主や国民民主両党の支援者にも浸透を狙う。

 この合区の島根側では、選挙カーもたすきもない比例代表の自民新人、三浦靖氏(46)も活動している。8日は街頭で「私ができる唯一の選挙運動は舞立さんの応援です」と語った。

 三浦氏は、今回から導入された特定枠の候補。比例代表は候補者名か政党名で投票され、候補の得票順で当選するが、特定枠候補は、優先的に当選となる。

 個人としての選挙運動は認められておらず、個人演説会やビラ配布、選挙事務所の設置、名前の連呼も禁止されている。

 今回合区で鳥取の舞立氏を公認したため、特定枠で島根の現職を擁立する予定が5月に急逝。現職衆院議員(比例中国ブロック)だった島根出身の三浦氏にお鉢が回ってきたというわけだ。自民はもう一方の合区「徳島・高知」の選挙区から漏れた現職も特定枠で処遇している。

 三浦氏は「ルールに従い、仲間や党のために活動するしかない」。舞立氏の応援弁士としてのみ街頭に立ち、支援団体では舞立氏の支援を要請する日々だ。

 選挙区では候補者の姿がなかなか見えず、特定枠候補の主張は聞けない。「候補者本人の訴えも聞けないのに、何が選挙じゃ」。有権者にはしらけた空気が漂っている。

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