参院選1人区を歩く(5)佐賀 農業票「ねじれ」解けるか

西日本新聞 総合面

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 「首相は農家の経営形態に限らず、規模の大小に限らず、地域を守る人を支援するとおっしゃっている」

 佐賀県を代表する農業地域・白石町で6日あった自民現職山下雄平氏の決起大会。山下氏は、自らが国会で安倍晋三首相から引き出した答弁を紹介し、自民党が農家の大規模化や法人化ばかりを考えているわけではないとアピールした。

 正准会員合わせて約12万人の農家を抱えるJAグループ佐賀の政治団体「県農政協議会」(農政協)は、県内の選挙戦に大きな影響力を持つ。与野党問わず「農家をいかに取り込むかが、勝負の分かれ目だ」(陣営関係者)。

 農政協は今回、山下氏を推薦したが、2016年参院選、17年衆院選では自主投票。結果、衆院では県内2選挙区とも自民候補が野党候補に敗れた。

 自民の固い支持基盤だった農政協だが、農業の大規模化や環太平洋連携協定(TPP)などを巡って安倍政権と溝が深まり、15年の県知事選で決定的に「ねじれ」た。首相官邸や自民の一部が元武雄市長を擁立したのに対し、農政協は元総務官僚を担ぎ出し激戦を制したが、政権への不信感はさらに高まった。

 とりわけ、山下氏に対する反発は強かった。7年前に新聞社を辞め、自民公認が決まる前の山下氏をJA佐賀中央会はしばらくの間、職員と机を並べて勉強させ、田植えなども学ばせた。「現場を知り、農家代表の政治家に育てる」(農政協関係者)ためで、初当選を強力に後押しした。

 だが、山下氏は知事選で対立する元市長の選対本部長を買って出た。「自分の出どころを裏切る行為。失望した」(JA幹部)。

 一部に遺恨が消えない中、国とのパイプ役が必要な農政協は今回、山下氏の推薦を決めた。農政協幹部は「ねじれを直さないといけない」と話す。ただ、山下氏が面会を求めても、今も拒否する幹部がいる。「推薦こそもらったが、農家にどこまで浸透するだろうか」。陣営関係者には依然、不安が残ったままだ。

 一方、隣県の長崎で参院議員を1期務めた犬塚直史氏を擁立した国民民主党。6日に応援で佐賀入りした玉木雄一郎代表は県特産のアスパラガス畑を視察し、演説で「犬塚さんは1次産業をしっかり守ってくれる候補者だ」と持ち上げた。

 犬塚氏本人は、国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)での開門調査の必要性や、陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備計画の反対などを訴えて票の取り込みを狙う一方、農業政策に触れる機会は少ない。公示直前、党県連が農政協に提出した推薦願は断られた。

 県中部で約50年間、コメや麦、大豆を生産する70代の農家男性は、参院選後に動きだす農産物の関税を巡る日米貿易交渉の行方が気掛かりだ。

 「TPPしかり、大規模化しかり、安倍政権は農業たたきばっかりで、今度は信じていいものか。でも野党もバラバラやっけんね」

 =おわり

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