謝罪の裏、法的責任否定 政府声明、談話と矛盾 ハンセン病家族訴訟

西日本新聞 総合面

 ハンセン病家族訴訟を巡り、元患者の家族へのおわびを盛り込んだ首相談話と、判決を批判する政府声明を一緒に出した政府の手法は、2001年に元患者本人が起こした国家賠償訴訟の敗訴を受け入れた際と同様だ。談話で「果たすべき責任」を述べながら、声明で法的責任を否定する対応に、識者からは疑問の声も上がる。

 「判決を謙虚に受け止めた首相談話と、非難する政府声明は明らかに矛盾しており、どちらが政府の本心か分からない」。ハンセン病問題に詳しい敬和学園大の藤野豊教授(近現代史)は批判する。

 隔離政策を違憲と断じた01年5月の熊本地裁判決の後も、政府は謝罪を表明する当時の小泉純一郎首相談話と、判決の問題点を指摘する政府声明の二つを発表した。藤野教授は「01年と同様に今回も国民の目をごまかすような手法で、自らの責任をきちんと考えているか疑念を生じさせる」と話す。

 今回の家族訴訟判決に対し、声明で疑問視しているのは(1)らい予防法廃止後の国の責任(2)国会の立法不作為(3)時効の判断。特に「国民の権利、義務関係への影響があまりに大きい」と神経をとがらせたのが、時効を巡る判断だ。

 民法は、不法行為を受けて生じる損害賠償請求の権利は、損害と加害者を知った時から3年で消滅すると定めている。地裁判決は、15年に国の責任を初めて認めた同種訴訟の判決が提訴のきっかけだったと指摘。この判決を踏まえた弁護士の指摘で初めて、国が加害者だと知ることができたと判断した。厚生労働省の担当者は「弁護士の指摘がなければ永遠に時効が進行しないことにもなり得る。他の訴訟でも同じ理屈が使われてしまう」と懸念。声明も「制度の趣旨や判例に違反する」と批判した。

 この政府の意見に専門家は首をかしげる。時効に詳しい福岡大法科大学院の石松勉教授(民事法学)は「時効の起算点は事例に則して柔軟に解釈するべきだ。加害者と被害者の関係が一般市民に分かりにくいという家族訴訟の特殊性を踏まえた判決は妥当で、声明は形式的だ」と指摘する。

 政府としては、今回の「異例の判断」が他の訴訟に波及しないよう、歯止めとする狙いがあるとみられる。数々の国賠訴訟に関わってきた福岡市の武藤糾明弁護士は「声明は控訴したかった官僚に対する言い訳にすぎない。重要なのは確定した判決を踏まえ、談話で示された救済の枠組みをきちんと作り上げていくことだ」と話した。

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