安倍政権の外交 実績を冷静に検討すれば

西日本新聞 オピニオン面

 今回の参院選で、安倍晋三首相率いる自民党は政策パンフレットの冒頭に「力強い外交・防衛」を掲げた。年金問題などの争点で守勢に回る中、「外交の安倍」のイメージを打ち出して支持を広げる戦略が鮮明だ。

 20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でトランプ米大統領らが来日し、日本を舞台にした派手な首脳外交が報じられた直後でもあり、「外交イチ押し戦略」は、それなりの効果を上げるかもしれない。

 しかし、イメージに惑わされずに6年半に及ぶ安倍政権の外交を点検すれば、任期が長い割には大きな成果を上げていないと指摘せざるを得ない。

 戦後の歴代首相の中で任期が長かったのは吉田茂、佐藤栄作両氏らだ。このうち吉田氏はサンフランシスコ講和条約で敗戦国日本を国際社会に復帰させ、佐藤氏は沖縄返還を実現した。

 安倍首相は第1次政権も含めれば、既に吉田氏の任期を超え佐藤氏にも迫る。田中角栄氏の任期は意外と短く約2年5カ月だが、その間に日中国交正常化という難事を成し遂げた。

 一方、安倍首相は任期の長さにもかかわらず、自ら最重要課題と位置付ける「北朝鮮による拉致問題の解決」について、現時点で結果を出していない。

 安倍首相は公示直前の党首討論で、司会者から「金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談への進み具合は(登山で言えば)何合目なのか」と質問されたが、見通しを示せなかった。

 もう一つの重要課題であるロシアとの北方領土返還交渉も行き詰まりが目立つ。安倍首相は事実上、北方四島のうち2島返還に絞って交渉を加速させる方針に転換したとされるが、ロシアは歩み寄ってこない。アジアを見れば、日中関係は改善しつつあるものの、韓国との関係は悪化の一途をたどるばかりだ。

 米国と中国との対立を軸に、国際情勢は不安定さを増している。中東ではトランプ政権のイラン核合意離脱をきっかけに、緊張がエスカレートしている。

 こうした情勢に対応するには、自民党が主張するように「政治の安定」が重要になるのもまた事実だ。野党の外交手腕が分かりづらいだけに、「不安定だからこそ現政権」の主張が一定の説得力を持つ側面はある。

 米国第一主義のトランプ政権が同盟国に対しても厳しい姿勢を示す中、「安倍首相だからこの程度で持ちこたえている」と見るのも可能だ。ただ、これも厳密に言えば実証できない。

 安倍政権が6年半で何ができて、何ができていないか、有権者の冷静な検討が求められる。

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