警察の不正兼業 「アリの一穴」が組織侵す

西日本新聞 オピニオン面

 組織内部の侵食は、多くの場合、「アリの一穴」から始まるとされる。「これくらいなら」という甘えが、これまで度重なる警察の不祥事を生んできた。

 警察庁と17道府県警の警察官らが出版社の依頼で昇任試験問題集を執筆し、適正な手続きを取らないまま報酬を受け取っていた。警察庁などがきのう、福岡、熊本県警を含む21人の処分を発表した。このうち、より重い懲戒処分となった3人は、いずれも辞職した。

 国家公務員が5千円を超える贈与などを受けた場合に報告書を提出しなければならない国家公務員倫理法や、兼業を原則禁止した地方公務員法などに抵触した。3人のうち大阪府警の刑事部参事官(警視正)は100回にわたり、計約2千万円を受け取っていた。出版社の内部資料によると、2010年から7年間で467人に計1億円以上が支払われていたという。

 この問題は本紙が全国の友好紙と連携して今年1月、一斉に報道した。これを受け、菅義偉官房長官が「事実確認を行っている」と表明した。

 細かく階級分けされた警察組織では、昇任試験が警察官人生を左右する。ところが、試験勉強をする際、過去の試験問題を参考にできる仕組みはない。

 そこで試験対策用の問題集の需要が生まれ、出版社のビジネスチャンスにもなる。法令の解釈や実務の在り方を問う問題集の性格上、執筆・監修には現職警察官の力が必要になる。

 とはいえ、公務員にはより高い倫理規範が求められる。とりわけ警察官は法令に基づき逮捕や家宅捜索など一般市民に対し公権力を行使する存在だ。

 昇任試験の勉強を通じ、厳格に職務を遂行するための知識が身に付くということであれば、組織として公明正大に問題集作成の仕組みを作ればいい。

 問題は、今回のように不透明な形で業者から依頼を受け、報酬を個人が手にすることにある。特定の警察幹部に依頼が集中すれば癒着を生みかねない。

 一般論だが、関係がこじれた業者側が反社会勢力と結託し、警察官の「不正」という弱みに付け込む-。そんなことはあり得ない、と断言できるのか。

 2001年に発覚した福岡県警の警察官らによる違法カジノバー汚職事件では、金品の見返りに家宅捜索などの捜査情報を相手に伝える行為がエスカレートして泥沼にはまった。

 警察法は警察の活動について「公共の安全と秩序の維持」の範囲に限られるとうたう。警察官の大半は命懸けで任務に当たっている。今回の処分内容や対象が妥当だったかも含め検証し組織内の甘さを一掃すべきだ。

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