【DCの街角から】7月4日、つかの間の連帯

西日本新聞 夕刊

 「社会の分断が進んでいる」と毎度のように記事を書いては、うんざりさせられる米国での取材で、数百人が一体となって連帯感を示す姿を見たのは初めてだったかもしれない。独立記念日の祝日となる7月4日に開かれた、市民権を取得した人たちの宣誓式のことだ。

 当日の朝、訪れたのはバージニア州にある初代大統領ジョージ・ワシントンの元邸宅がある高台。宣誓式は全米各州で頻繁に行われているが、米国の「誕生日」に建国の父ゆかりの地で、新たな母国への忠誠を誓うのは特別なことだそうだ。

 式には世界28カ国から米国に移住した51人が出席。証明書を受け取って正式に「米国人」になると、星条旗の小旗を手に満面の笑みを浮かべたり、涙を流して家族と抱き合ったり。その様子を、元邸宅を訪れていた観光客たちが見守り、温かい拍手で祝福するという何ともほのぼのとした良い光景だった。

 33年前、仕事と安全を求めて中米ホンジュラスから渡米したという移民の女性レイナさん(54)は「この日が来るのが夢だった。とにかくハッピーよ」と語ってくれた。しかし‐。

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 独立記念日の夕方、首都ワシントンではトランプ大統領が異例の演説と、戦闘機を飛行させるイベントを計画していた。近くなので見に行くかと尋ねると、レイナさんは「行かない」と言ったきり口を閉ざした。

 付き添っていた家族が彼女の心中をこう代弁した。「(メキシコとの国境の)収容施設に子どもを閉じ込めるような移民政策は改善されるべきだ。大統領には仕事をしてほしい」

 米メディアの中にはトランプ氏に対し、宣誓式に参加して移民と向き合うべきだという主張もあった。だが、不法移民対策を推し進めるトランプ氏が式典で「合法移民は歓迎する」と祝福したとしても、この日の雰囲気は保たれただろうか。

 移民問題が深刻な南部テキサス州から観光に来た男性(52)が「大統領は愛国心にあふれている」と話したように「新市民」の中にもトランプ氏の参加を喜ぶ人はいただろう。しかし、レイナさんはどんな表情を浮かべただろうと考えると、トランプ氏が現れなくて良かったと思う。そもそも本人にそんな気があるのかは分からないが。

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 その後、取材したトランプ氏の演説会場では、軍事パレードにも似た航空ショーに大勢の人が見入ったが「演説は聞きたくない。無視した」との声も。独立記念日の3日後、女子サッカーのワールドカップで優勝した米国代表の主力選手は、お祝いとしてホワイトハウスに招かれても応じないと明言した。気が付けば、いつもの分断。またうんざりだ。(田中伸幸)

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