福大対応に消えぬ不信 「本当の合否すら不明」 医学部不適切入試

西日本新聞 社会面

 文部科学省が不適切と認定した昨年の福岡大医学部の入試で、3浪の長女が不合格となった男性(56)から「福大の対応には納得できない」との声が寄せられた。不適切入試とされた9大学の医学部のうち、追加合格の措置を取らなかったのは福大だけ。現役生を優遇する得点調整がなければ合格していたのかどうかも、明らかにしていない。男性は不信感を募らせている。

 男性の長女が医師を志したのは中学生のころだった。男性は約30年前に交通事故に遭って大けがをし、病院で治療を受けて一命を取り留めた。この話を聞いた長女は「外科医になって、人助けがしたい」と話すようになった。

 現役時代に国立大医学部の受験に失敗しても諦めなかった。予備校で3年間、毎日朝から晩まで勉強した。昨年、福大医学部の1次試験を通過したが、2次試験で不合格に。3年間の浪人生活では、予備校の授業料などで1千万円近い出費があった。

 昨春、医師になる夢を諦めて他大学の薬学部に進学。新しい道を歩み始めていた昨年12月、福大は2次試験で浪人生に不利な配点をしていたと発表した。

 3月には追加合格は行わず、不適切入試を受けて入学しなかった814人に慰謝料などとして10万円を支払うことを明らかにした。「こんな不公平がまかり通るなんて」。長女はショックを受けたという。

 6月1日に福大から長女に文書が届いた。追加合格を行わない理由として、施設や教員数の対応が追い付かず「在学生の教育環境の維持も考慮せざるを得ない」とあった。合否の再判定も試みたが、手法によって合格者が変わるため「公正な合格再判定は困難」と記していた。

 現役時代から4年間医学部を目指した長女が、本来合格していたのかどうかも分からないままだ。

 男性は「まずは合否を知らせてほしい。娘の努力を踏みにじり、10万円で解決しようとするのは開き直りとしか思えない。複数の合否判断の手法があるのなら、そのいずれでも合格となった受験生は追加入学させるべきだ」と憤っている。

全国唯一、追加入学ゼロ

 医学部入試を巡り女子や浪人年数の多い受験生に不利な扱いをしたとして、文部科学省は昨年12月、福岡大など9大学の不適切入試を認定した。文科省によると、昨年以前の入試で本来なら合格だった受験生のうち43人が今春、福大を除く8大学に追加入学した。

 福大の調査委員会報告書によると、2002年度入試から、一般入試2次試験の調査書の配点を現役最高20点、1浪同10点を加点。推薦入試でも現役の調査書は10点、1浪は5点と差をつけた。17、18年度入試では計46人が本来は合格していたのに不合格になった可能性があると推計した。

 追加合格を行わなかった理由として「推計に用いた複数のシミュレーションによって合格者が変わり、著しく不公平な事態を招く」と説明。高校卒業程度認定試験の合格者など調査書が提出できない受験生も複数いたことで、再評価が困難だったことも一因とした。

 報告書は、得点調整は不適切としながら、多浪生への影響は小さく、追加入学措置は不要と指摘した。一方、福大と同様に、現役生や1浪生の調査書を優遇していた昭和大は3人を追加入学にした。福大は「大学独自の合否の評価方法がある。他大学の事例は検討していない」としている。

 文科省によると、追加入学者数は一連の問題の発端となった東京医科大が最多の24人で、金沢医科大6人▽北里大4人▽昭和大3人▽岩手医科大、日本大各2人▽神戸大、順天堂大各1人‐だった。

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