香港デモ若者過激化 条例審議延期表明1ヵ月 直接選挙や民主化要求も

西日本新聞 国際面

 【北京・川原田健雄】香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について、香港政府トップの林鄭月娥行政長官が審議の「無期限延期」を表明して15日で1カ月。林鄭氏は今月「改正案は死んだ」と述べ、廃案方針をあらためて強調したが、「完全撤回」を求める若者らは納得せず対決姿勢を強める。抗議活動は過激化傾向にあり、混乱は収まりそうにない。

 「改正案は死んだ。改正の取り組みは完全に失敗だった」。林鄭氏は9日の記者会見で力なく語った。改正反対の動きが拡大し、デモ隊と警察が衝突する事態を受け、林鄭氏は6月15日に審議の無期限延期を表明。その後「廃案を受け入れる」「完全停止」と表現を強めながら事態収拾を図ってきた。それでも撤回を明言しないのは、条例改正を認めた習近平指導部の責任問題にならないよう配慮しているためとみられる。

 こうした香港政府の姿勢に市民の抗議はやまない。7月に入っても毎週、デモや集会が続く異例の事態になっている。6月以降に起きた大規模デモは民主派団体「民間人権陣線」が主導した平和的なデモと、通信アプリなどで呼び掛けられた若者らの散発的なデモに大別される。散発的なデモには特定のリーダーがおらず、「平和的なデモでは政府を動かせない」と過激化の傾向を強めている。今月1日には一部が立法会(議会)のガラスを割るなど破壊行為に走った。

 市民の間では暴力行為は支持しないものの「若者の気持ちは理解できる」という見方が少なくない。親中派も激しい若者批判は避けているのが実態だ。

 抗議活動が長引く中、若者らの主張は多様化している。改正案の完全撤回や林鄭氏の辞任といった当初の訴えから、デモ隊を催涙弾などで強制排除した警察の糾弾にシフト。さらに行政長官と立法会議員の完全な直接選挙の実施や、民主化を求める声まで上がっている。毎週デモに参加しているという30代の女性は「香港の自由を守るには今、行動を起こさないと手遅れになる」と訴える。

 ただ、中国共産党の権威を重視する習指導部が民主化の要求に応じる可能性は極めて低い。行政長官選挙の民主化を求めた2014年の大規模デモ「雨傘運動」は中国側から何の譲歩も引き出せずに終わり、その後、若者の政治運動は停滞した。今回の抗議活動も先鋭化が続けば、袋小路に陥る恐れが指摘される。

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