香港、忍び寄る中国の監視

西日本新聞 国際面

 「200万人近く」(主催者発表)が「逃亡犯条例」改正案反対のデモに参加した6月16日。香港島の金鐘地区には深夜にもかかわらず多くの市民が集まっていた。前日、同地区のビルに改正案反対の横断幕を掲げた後、飛び降り自殺した30代男性を弔うためだ。

 無数の白い花がささげられた現場を撮影していると、近くの男性の様子がおかしいことに気付いた。一見、報道関係者のようだが、カメラの液晶画面に写っているのは市民の顔。献花しようと列を作った一人一人を写真に収めていた。こちらの視線に気付くと男性はすぐに立ち去った。

 同じような人物は数時間前にも目にした。デモ隊に同行取材中、近くにいた男性が私の顔やメモ帳の写真をスマートフォンで何枚も撮影していたのだ。問い詰めると「たまたま写っただけ」などと大陸なまりの広東語で釈明した。

 中国大陸では人権派弁護士や民主活動家の行動は当局に監視され、海外メディアの記者も電話や通信アプリを盗聴・盗み見される。拘束された人権派弁護士の裁判で、取材をせずに外国人記者ばかり撮影する“自称中国メディア記者”が現れたこともあった。彼らの身元は不明だが、背後には当局の影がちらつく。

 人工知能(AI)を使った顔認証技術の開発が進む中国では将来、「反共産党」志向の市民や記者の顔画像がデータベース化され、監視カメラで常時行動を把握されるようになるかもしれない。一国二制度の下、さまざまな自由が保障される香港も例外ではない。監視の目はひそかに、しかし確実に忍び寄っている。 (北京・川原田健雄)

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