【参院選あなたの声から】新規就農「壁」厚く 中山間地維持へ支援必要

西日本新聞 社会面

コープファームのミニトマト生産施設で収穫を体験する親子連れ。「事業が順調だからこそ、こうした催しもできる」と同社=福岡県うきは市 拡大

コープファームのミニトマト生産施設で収穫を体験する親子連れ。「事業が順調だからこそ、こうした催しもできる」と同社=福岡県うきは市

家族経営体数と組織経営体数の推移

 「農家の高齢化対策は大丈夫か」「就農希望者の育成は」…。特命取材班に農業の今後を心配する声が寄せられた。減少傾向だった農業総産出額は2015年以降、回復基調にあるが、農業従事者はこの10年で60万人以上も減少しており、中山間地域の崩壊にもつながりかねない。政府は経営支援の給付金や法人化などで担い手確保を目指すが、就農の「壁」は厚く‐。

 1年目は利益ゼロ。4年目でも約50万円。九州の過疎地に移住し、新規就農して5年目の40代独身男性は農業で稼ぐ難しさに直面している。「甘かった。生産はまずまずだが販売が…」

 農業は頑張った分だけ稼げると思い、会社員から転身。故郷のそばに家と農地を借りて野菜を栽培する。初期投資で借金を負った。

 生活費は、農林水産省の農業次世代人材投資事業の給付金150万円(年間)で賄う。ただ給付期間は最長5年。男性の受給は今年いっぱいだ。

 新たにトマト栽培に乗り出して、利益を増やす考え。トマトは安定収入が得られる販路のめどが付いているからだ。「不安はあるが期待もある。今年は利益100万円、来年は一気に400万円にしたい」

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 農業の課題は、深刻化する担い手不足と高齢化だ。

 農水省は農業経営体について、いわゆる農家を指す家族経営体(1戸1法人を含む)と、企業などを指す組織経営体(組織型)に分類。組織経営体は増えている一方、家族経営体は減少し、その中心の「基幹的農業従事者」も10年の約205万人(65歳以上は61・1%)から19年は約140万人(同69・7%)と減っている。

 担い手確保に向け、独立・自営で新規就農する45歳未満の人を対象に12年度から始まったのが人材投資事業だ。17年度までに1万8235人が利用し、給付金の総額は約761億円に上る。ただ、17年9月までに受給を終えた4644人のうち、165人が経営不振などで離農。抜本的な改善策にはなっていない。

 農業参入専門コンサル会社の農テラス(熊本県益城町)の山下弘幸社長は「給付金事業がしっかりと効果を上げるには、経営の支援策をもっと用意する必要があるのではないか」と語る。

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 7月上旬、福岡県うきは市のミニトマト生産施設で親子連れら約200人が収穫体験を楽しんだ。県内に50万人以上の組合員がいるエフコープ生活協同組合(福岡県篠栗町)系のコープファームが組合員向けに2日間開いた催し。収穫したトマトは無料で持ち帰られるサービスぶりだった。

 栽培は昨年8月から。生産量は目標の年間60トンを上回った。エフコープの店や宅配で販売し、卸売市場へ出荷するよりも利益を上げる。「エフコープの組織力を生かした事業展開で経営も順調」と高山昭彦社長。

 組織型は農家より経営力が安定しているのが一般的。減少傾向だった農業総産出額は15年からは増加に転じ、17年は9・3兆円で最盛時の1984年の8割弱に回復した。生産農業所得も12年の3兆円から17年は3・8兆円に増加。自民党はアベノミクスの成果としてアピールしており、公約でも「法人化を推進する」と掲げる。

 ただ、農業は生産活動以外に、中山間地の洪水防止や地域の維持など多面的な役割も果たしている。農業政策に詳しい中村学園大(福岡市)の甲斐諭学長は「農業を産業として捉えれば組織型が軸になっていくのは良いこと。ただ、過疎地の崩壊防止も農業に求められるとすれば、そこで踏ん張る農家への支援策の充実も必要」と訴える。

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