不登校(7)連携 心に寄り添う

西日本新聞 くらし面

 広い教室に長机が並び、正面のホワイトボードに明るい日差しが映える。緊張気味に室内に足を踏み入れた子どもたちを、女子大学生が笑顔で迎えた。

子どもの居場所 大学に

 5月、福岡県太宰府市の筑紫女学園大。同大が本年度、本格始動した「キャンパス・スマイル事業」は、大学を不登校の子どもたちの居場所づくりに生かす取り組みだ。子どもたちは同市教育支援センター(適応指導教室)「つばさ学級」に通う小中学生。学内の研修を受け認定された約80人の学生がスマイル・サポーターとして活動している。

 利用は2週に1回から週複数回、滞在時間も30分から3時間以上と個人のペースで選択できる。1人ずつに担当サポーターが決められ、運動をしたり、ゲームを楽しんだり。学習も含めてやりたいことの提案や意見は積極的に受け入れているという。

 子どもたちも年齢の近い「お姉さん」が相手とあって好きな食べ物や芸能人の話で盛り上がり、すぐに打ち解ける。この日、短い時間を過ごした小学4年の女児は「お話しするのが楽しかった。次は一緒にバドミントンをしたい」と笑顔を浮かべた。

 サポーターの同大1年川畑琴子さん(19)には、不登校経験のあるきょうだいがいる。そのきょうだいが周囲の支えで再び学校に行けるようになったのを見ており「身近にいたからこそ、子どもの気持ちに寄り添えるし、自分も関わりたい」と手を挙げた。

 実際に子どもと触れ合うと、明るく普通の子と何ら変わらないと感じた。「子どもたちも『不登校の子ども』と特別視してほしくないと思う。今学校に行けないから、この先もだめというわけでもなく、自分を卑下する必要もない。構えずに接したい」と語った。

支援する学生 経験積む場

 不登校の子どもを巡っては近年、自治体が設置する教育支援センターのほか、専門知識を持つ「スクールカウンセラー(SC)」や「スクールソーシャルワーカー(SSW)」の配置など支援、相談体制の充実が図られている。それでも不登校の増加傾向は続いている。

 福岡県内でSSWを務める20代女性は複数の小中学校を掛け持ちで担当。中学校を拠点に校区内の小学校に目配りする。保健室などへ別室登校する子どもに声を掛け、状況に変化がないか耳を澄ますほか、必要に応じて保護者と面談したり、家庭訪問したりする。

 常時一つの学校にいるわけではないので鍵は情報収集力。しかし「教科担任制の中学校に比べて小学校の先生とは1日が終わらないとゆっくりと話せず、時間的に厳しい面もある」。

 教師との役割のすみ分けも難しい。男性教師が対応に苦慮する女子児童の相談に乗ることはあるが聞き取る内容の線引きに思い悩む。「教師の立場もあり、踏み込んだ話は聞きにくい」。とはいえ日々、多忙を極める教師の姿に触れ「実際に問題が起きても、現場は対症療法的になっているのではないか」と懸念する。

 学校現場や教育委員会には「SSWがいるから不登校の数を減らせる」といった強い期待感がある。自分もそう思っていた。ただ、子どもと話していると、必ずしも少なくすることばかりが正解ではないと感じている。「『行きたくない』という価値観もある。保護者が焦りを感じていても、子どもの意思を尊重し、スモールステップを重ねることが大事だと言い聞かせている」

専門職 すみ分けに苦悩

 不登校支援の新たな形を開く筑紫女学園大の取り組みを行政側も期待する。太宰府市教育支援センターの古賀信行所長(65)は「適応指導教室に通えない児童生徒が全く違った環境だから足を向ける場にもなり得る」と言う。

 一方、サポーターを務める学生の中には卒業後、SCやSSWを目指す人も多く、事業は学生のキャリア教育の貴重な機会にもなっている。担当する同大の大西良准教授(社会福祉学)は「学生は子どもとのかかわりを通じて多様な価値観を学び、社会への問題意識や対応能力を育むことができる。大学としても地域課題解決に向けて施設や人材を活用することで存在意義を示すことにもなる」と手応えを語った。

 大学側が受け入れているのは現在、地元の太宰府市のみ。将来は周辺自治体とも連携して対象地域を広げていく構想だ。

スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー】文部科学省は不登校の児童生徒や保護者からの相談を受け、心のケアや学校外の機関との連携を図る専門職スクールカウンセラー(SC)とスクールソーシャルワーカー(SSW)の積極的な配置を進めている。

 子どもの内面のケアを重視するSCは主に臨床心理士など心理の専門家が、子どもを取り巻く環境に働き掛けるSSWは社会福祉士や精神保健福祉士など福祉の専門家が担う。国は本年度、SC活用事業に約47億円、SSW活用事業に約17億円を計上。自治体が配置する人件費の3分の1を補助している。本年度中にSCは全国の公立小中学校全校2万7500校に、SSWは全公立中学校区に1万人の配置を目標に掲げる。

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