「ふっこう割」に弊害? 新潟の地震適用へ「与党アピール」の声 参院選

西日本新聞 社会面

地震復旧支援の要望書を安倍晋三首相(中央)に手渡す花角英世新潟県知事(左)ら。この日、首相は「応援キャンペーン」実施を表明した=5日、同県村上市 拡大

地震復旧支援の要望書を安倍晋三首相(中央)に手渡す花角英世新潟県知事(左)ら。この日、首相は「応援キャンペーン」実施を表明した=5日、同県村上市

熊本地震後のふっこう割の販売を告知する旅行会社の窓口=2016年7月、福岡市博多区 これまでのふっこう割の実績

 6月の最大震度6強の地震の被災地支援策として、政府は今月、山形、新潟両県を訪ねた観光客の宿泊費を3千円補助する「応援キャンペーン」に乗り出す。従来の「ふっこう割」と同様の取り組みだ。ふっこう割は2016年4月の熊本地震を皮切りに、その後も3回の災害に適用。大量のキャンセルに苦しむ観光地で誘客に効果を発揮した。一方、終了後に値崩れを招いたり、他の観光地の客が減ったりする弊害が散見される。適用災害の基準があいまいで、与党や官邸が選挙のアピール材料に利用しているとの指摘もある。

 熊本地震では、16年7~12月に適用された。宿泊やツアー商品を熊本、大分両県で最大7割、九州の他の5県で最大5割補助。延べ272万人が利用し、九州観光推進機構の試算では、国の事業費180億円の3・3倍に当たる600億円の効果があった。

 日奈久温泉旅館組合(熊本県八代市)の松本啓佑組合長(39)は「息を吹き返す契機になった」と振り返る。地震直後の大型連休は、当時17軒あった温泉旅館の予約が全てキャンセルになったが、ふっこう割で客が一定程度戻ったという。

 16年の鳥取中部地震、18年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震でも実施。北海道の地震では18年10月~今年3月に適用され、キャンセル人数の1・5倍に当たる延べ178万人が宿泊した。道によると、観光消費額は720億円で、地震の損失額の2倍に達した。

 ただ、いいことばかりではない。旅行業界関係者によると、ふっこう割終了後も安い価格が定着し、多くの業者が終了後も値引きを続けざるを得なかった。「戻るのに2年かかった」と関係者の一人が明かす。

 特別措置のはずが、連発されていることの問題を指摘する声もある。業界関係者によると「またどこかでふっこう割があるだろう」と“買い控え”する消費者がいる。ふっこう割の余波で、他の観光地向けの旅行商品の売れ行きが鈍った例も。大手旅行会社の関係者は「カンフル剤も打ち続けると副作用が出る」と話す。

 17年7月の九州豪雨は大きな被害が出たものの、政府はふっこう割を実施しなかった。観光庁によると、適用はキャンセルの件数などを勘案するが、明確な基準はないという。

 安倍晋三首相が山形、新潟の「応援キャンペーン」を表明したのは、自民党候補の苦戦が伝えられる参院選新潟選挙区での今月5日の応援演説だった。観光庁などと被災自治体が調整段階での表明で、地元では驚きの声が上がった。

 「適用には被災地の陳情の大きさと、官邸の意向が左右する。今回、官邸は関係省庁に準備をかなり急がせた。参院選が念頭にあるのは間違いない」。政府関係者は証言した。

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