業績連動報酬は万能か 岩本 誠也

西日本新聞 オピニオン面

 今年の株主総会シーズンが終わった。

 会社を追われた元経営者側と会社側が激しく対立した住宅設備大手LIXIL(リクシル)グループ、企業の私物化を批判されたトップが去って大株主ルノーとの新たな関係が注目された日産自動車など、話題が豊富だった。

 個人的にはJR九州に注目していた。米投資ファンドから自社株買いなどの株主提案を受け、会社側が反対票集めに必死らしいと聞いたから、ではない。ファンドの提案内容に似た業績連動型株式報酬制度を導入すると発表していたからだ。導入は株主総会での承認が前提となる。

 大まかに言えば、3年間で6億円を上限に会社が金を出して自社株を買い、業績に応じて取締役らに割り当てる仕組み。実際に株を手にするのは退職後。株価が上がれば自分がもらう株の価値が高まるため、仕事の意欲を引き出すインセンティブ(動機付け)になるという理屈だ。

 業績連動型の報酬は珍しくない。安川電機や九州電力など、九州の地場企業でも導入例が増えている。

 こうした報酬制度の導入の旗を振るのは経済産業省だ。

 各国の最高経営責任者(CEO)の報酬を比較した資料によると、日本は報酬の6割程度が固定なのに対し、欧米では報酬の7~9割を、年ごともしくは中長期の業績などによって変動するインセンティブ型で占めた。

 欧米のように業績に連動する部分の割合を高めれば、経営者が中長期的な企業価値向上にも熱心に取り組み、企業の稼ぐ力が高まる。「攻めの経営」を促す役員報酬制度に変えれば、経営者にも株主にもばら色の未来が-というのが経産省の狙いらしい。

 JR九州は、年4億2千万円以内という従来の取締役の報酬枠とは別に、業績連動報酬枠を設ける。6億円のうち3億9千万円が取締役分なので1年当たり1億3千万円。報酬が3割増える計算だ。

 2年前の九州豪雨で被災した日田彦山線を巡り、JR九州は鉄道復旧の場合は、沿線自治体に年1億6千万円の支援を求めている。そうなればJR九州の赤字は減る。その結果、取締役らの懐は…。

 他人の財布の話をするのは気が引けるが、少々、引っ掛かる。はやりの業績連動報酬は万能なのか。赤字の事業は不要、大赤字のローカル線は廃止-そんな冷徹な論理が透けて見える気がする。

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 ▼いわもと・せいや 熊本県八代市出身。1988年入社。北九州支社、東京支社、長崎総局などで取材。佐世保支局長、経済部長を経て論説委員。

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