経済政策 地域浮揚への処方箋示せ

西日本新聞 オピニオン面

 参院選では、地域経済の振興の在り方を巡る論戦の深まりも求められる。

 安倍晋三首相は街頭で「景気回復の実感を地域の隅々まで届くようにしたい」と訴えている。看板の経済政策「アベノミクス」を掲げて6年半余り。与党は実績を強調するが、果たして地方は元気になっているか。

 全都道府県で有効求人倍率が1倍を超え、地方も人手不足が深刻だ。外国人観光客は年間3千万人を超え、訪日客の消費額が大幅に伸びた。首相は「観光業の活性化で地方創生が進んでいる」と自画自賛する。

 九州でも、外国人入国者数が2018年に初めて500万人を突破し、7年連続で記録を更新した。ただ同年の後半から、その勢いには陰りが見える。

 アベノミクスは「トリクルダウン」的な政策とされる。大企業や都市部の富裕層が潤い、その富がしたたり落ちるように全体に波及するという考え方だ。確かに、円安の効果で輸出企業の収益は大幅に改善し、株高で富裕層の懐は温まった。だが、その富が地方や中小企業、庶民に行き渡った実感はない。

 むしろ地方ではアベノミクスの副作用が目につく。日銀による異次元金融緩和の長期化で、地方銀行の体力が奪われているからだ。

 首相は「デフレではないという状況を極めて短い間に達成できた」と異次元緩和の成果を総括するが、貸し出し利ざやの縮小に人口減少が重なり地方銀行の経営環境は急速に悪化している。10年後には6割が最終赤字になるとの日銀の試算もある。

 地域に根ざす金融機関は、地元企業への融資や経営アドバイスなどを通じて地域を支える黒子役だ。政府は、経営が厳しい地方銀行や路線バス会社に経営統合や共同経営を促す法整備方針を成長戦略に盛り込んだ。

 これは十八銀行(長崎市)と、ライバルの親和銀行(長崎県佐世保市)を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)の経営統合の審査に長い時間を要したのがきっかけだった。地方銀行業界には地殻変動の動きが広がりつつある。ただ、経営統合が地域経済の振興に直結するわけではない。

 日本で一番高い東京・銀座の商業地の地価は、バブル景気の頃の1・5倍になった。東京五輪・パラリンピック開催を来年に控えての上昇で、東京一極集中に歯止めがかからない。

 参院選の論戦で、誰もが地域の浮揚を実感できるために何をすべきか、という視点は置き去りにされていないか。野党も最低賃金引き上げにとどまらない具体的な処方箋を有権者に提示し、意見を戦わせてほしい。

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