外国人医療スタッフ活躍 伊万里市の山元記念病院

西日本新聞 佐賀版

 「薬配りに、経管栄養。責任ある仕事が増えました」。伊万里市二里町の山元記念病院。医療スタッフたちが忙しく立ち回る入院病棟で、フィリピン人看護師のデグズマン・ジョナリ・コさん(32)は表情を引き締めた。経済連携協定(EPA)の枠組みで来日し、今年3月に県内で初めて外国人として看護師国家試験に合格したジョナリさん。加速する高齢化や人口減少による人手不足に悩まされている地方の医療・介護現場では、ジョナリさんをはじめ、外国人スタッフたちの存在が不可欠となりそうだ。 

 山元記念病院では中国人医師3人をはじめ、フィリピンとスリランカ、ミャンマーからの計14人の外国人がさまざまな在留資格で働いている。

 国は長年、外国への技能移転を目的にする技能実習制度の下で外国人材を受け入れてきたが、医療現場の人手不足解消を目的に2008年以降、フィリピンなど3カ国とEPAを締結し看護師・看護福祉士候補者の受け入れを開始した。

 EPA枠のジョナリさんは、母国の首都マニラやサウジアラビアの病院に勤務後、3年前に来日。2年前に山元記念病院に来た。院内では先輩看護師の古川麻美さんを教育係に国家試験の勉強を続け、3回目の受験で合格を果たした。「伊万里はマニラより住みやすく、収入も2倍。妹の看護学校の学費をすべて仕送りしています」と話す。

 合格後、ユニホームが介護士のオレンジ色から看護師の青色に変わり、医療処置もこなすようになった。「だんだん伊万里の方言も分かるようになった」と言い、ときどき冗談も言うしぐさがすっかり日本人スタッフに溶け込んでいる。同じ病院の介護施設で働くフィリピン人男性との結婚も控え、伊万里での新婚生活を思い描いている。

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 ジョナリさんと同じ職場に1月、スリランカからの技能実習生2人が入った。2人はディランカー・サドゥニ・ペレラーさん(21)とクムドゥニ・プラサンギガ・クマーリさん(30)。

 公益財団法人「国際人材育成機構」(アイム・ジャパン)を通して派遣され、介護現場で食事や排せつの介助をする補助員として働き、3年後に帰国する予定だ。ジョナリさんと同じ市内の寮に住み、仕事や暮らしについて助言をもらっている。

 ペレラーさんは玩具店を営む父と専業主婦の母と妹の4人家族。バドミントンが趣味で、来日前は中国系の土木会社の事務をしていた。クマーリさんは教員の両親を持ち、母国で介護の仕事に携わった。2人は日本で経験を積み「母国で介護施設を開きたい」と夢を語る。仕事の合間に日本語能力試験の勉強に励み、7日には佐賀大で受験するなど努力を惜しまない。

 同病院では月1回、外国人スタッフが集まり情報交換する。お昼時に各国の料理を持ち寄り、互いに日本語で会話する。「彼らの優しさや笑顔が患者さんを癒やしてくれる」。同病院の山元章生理事長が抱く外国人スタッフへの期待は大きい。

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 山元理事長が外国人スタッフの受け入れに積極的な姿勢を取る背景には、深刻な人手不足がある。

 伊万里市の人口は現在、10年前と比べ約3千人少ない約5万5千人。高齢化率は24%から30%に上昇しており、働き手が減る一方、患者や要介護者は増えていく見通しだ。

 国はさらなる外国人材の確保を目指し、4月に改正入管難民法を施行し、EPAとは別に新たな在留資格「特定技能」を創設した。医療のほか農業や建設業など14業種が対象で本年度、最大約4万7500人の受け入れを見込む。

 山元理事長も「地方では医師や医療スタッフの不足も顕著。外国人雇用は必須だ」と危機感を募らせており、6月には東京都内に来日中だったスリランカの海外雇用担当用大臣と面会し意見交換した。

 同市には名村造船所があり、毎年50人のインドネシア人技能実習生を受け入れている。官学民が連携した日本語学校開設の動きのほか、後継者不足に悩む農業など他分野への外国人受け入れも検討されている。

 はたして狙い通りに優秀な外国人材が伊万里に集まり、深刻化する人手不足を補ってくれるのか‐。山元理事長は日本語教育の支援や生活環境の整備など、受け入れ態勢の充実が鍵と見ている。「外国人雇用を進めるため、地域全体で共生社会を作っていくしか、地方が生きる道はない」

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