【ひと】第161回芥川賞に決まった今村夏子さん

西日本新聞 総合面

第161回芥川賞に決まり、記者会見する今村夏子さん=17日午後7時53分、東京都内のホテル 拡大

第161回芥川賞に決まり、記者会見する今村夏子さん=17日午後7時53分、東京都内のホテル

 「私にはとても手の届かない、一生とれないものだと思っていたので本当に驚いた」。2年ぶり3度目の候補で射止めた芥川賞に、緊張気味に喜びを語った。

 取材はせず、自らの経験や発想を絞り出す創作スタイルだ。初めて小説を書いたのは大阪市内のシティホテルで清掃のアルバイトをしていた29歳の時。広島の実家周辺を描いた第1作はいきなり太宰治賞に輝き、2011年には三島賞も受賞した。「どうやって恩返ししよう」。気負いで何年も書けない状態が続いた。

 転機は福岡市の出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」で文芸誌編集長を務めていた西崎憲さんからの小説依頼。「すごく熱いメールを頂いて心動かされた」。西崎さんとの約束を守ることだけ考えて完成した「あひる」は16年、芥川賞の初候補に。その後も締め切りを目標にすることで創作が続くようになり、再び注目作家となった。

 受賞作は「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性がホテル清掃の仕事を始めたことで変わっていく物語。構想に苦しんだが、女性を陰から観察する<わたし>を登場させ、突破口が開けた。語り手の正体が見えない不気味さが魅力。過去作も不穏な独特の雰囲気を評価されてきた。「意識しているわけではない。いろんな読み方をしてもらえることはうれしい」と語る。

 書くことは苦しい。しかし集中した時の「自分がなくなる感じ」は格別だ。

 「またあの楽しさを味わいたくて書いています」

 大阪市で夫と2歳の長女と暮らす。39歳。

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