【参院選あなたの声から】分断社会かみ合わぬ議論

西日本新聞 一面

ツイッターのアカウントが凍結された女性は、街頭に立ち投票を呼び掛ける。「政治に無関心な人たちに危機感を持ってもらいたい」 拡大

ツイッターのアカウントが凍結された女性は、街頭に立ち投票を呼び掛ける。「政治に無関心な人たちに危機感を持ってもらいたい」

 「安倍晋三首相の動画を批判的にツイートしてバズった(短期間で話題になること)ら、アカウントが凍結されました」。北九州市の自営業女性(36)が、こんな経験談を特命取材班に寄せた。インターネットを活用した選挙運動が解禁されて6年。選挙が身近になる一方、匿名性の高いネット空間では、意見が異なる人への攻撃が後を絶たない。女性は思う。「なぜこんなぎすぎすした社会になってしまったんだろう」‐。

 凍結されたのは6月、安倍首相とフランスのマクロン大統領の日仏共同記者会見を批判する動画のツイートだ。「ひたすら手元の原稿を読む『原稿の安倍』。そして誰も聞いていない」。「反安倍」の人が作成したと思われる動画をリツイート(転載)すると、一晩で700件超の「いいね」が付いたが、自身のアカウントは凍結された。

 差別的発言や脅迫など、ツイッター社の投稿ルールに違反したわけではない。投稿を快く思わない人からの「通報」が重なったのではないかと思っている。

 女性は、アベノミクスや米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設などで政府方針を批判するたびに「反日」などの言葉を浴びせられてきた。「ネットでは反権力的な人にカウンター(攻撃)を入れてくる『政府の監視員』がいる。安倍さんが言っていることをスピーカーのように拡散しているだけ」

 「ネトウヨ」(ネット右翼)、「パヨク」(左翼)。右派、左派は互いを蔑称で呼び、攻撃し合う。議論がかみ合うことはない。

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 参院選公示を前に、自民党本部が所属国会議員に配った冊子が話題になった。立憲民主党の枝野幸男代表はよだれを垂らし、共産党の志位和夫委員長は犬の姿という侮辱的なイラスト。首相は精悍(せいかん)なリーダーとして描かれていた。

 首相は旧民主党政権を「悪夢」と繰り返す。演説では枝野代表を「民主党の」と言い間違え、「党名がコロコロ変わるから覚えきれない」と笑うのが定番だ。

 「敵」と「味方」を峻別(しゅんべつ)する首相。その姿勢は、社会にもじわりと浸透する。政治的中立であるはずの官僚、横畠裕介内閣法制局長官は今年3月、国会の行政監視の役割について問いただした野党議員に対し、「このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えていない」と野党の態度を皮肉った。

 沖縄では2016年10月、米軍施設工事に反対する市民に、派遣された大阪府警の機動隊員が「ぼけ、土人が」と罵倒。これを閣僚らは「差別と断定できない」と擁護した。

 熊本大の鈴木桂樹教授(政治学)は「国の最高権力者が異論を唱える人を攻撃すれば、それを『後ろ盾』に親安倍派も増長し、反安倍派との非難の応酬に歯止めが利かなくなる。『あなたたちは向こう』と境界線を引く首相の姿勢が、分断社会の遠因となっているのではないか」と指摘する。

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 「敵をつくった方が政治が分かりやすい。安倍さんについて行けばいいんだなって強く思えるから」。福岡県内のトラック運転手男性(48)は、首相の姿勢に賛同する。「敵」の存在は、身内の結束を強める。安倍政権は、それを求心力につなげてきた側面がある。だが、思想・信条が異なる人は敵なのか‐。

 福岡市の会社員男性(32)は11日、首相の演説会場に駆けつけた。賃金が上がり、アベノミクスは評価している。今回は自民に投票するつもりだ。だが、前回は野党に投票した。野党の主張も理解できるし、期待する部分もある。

 「相手を打ち負かすことが政治じゃない。聞きたいのは国民の暮らしをどう支えるかという議論だ。対立からは何も生まれませんよ」

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