「真実」政府ひた隠し 実質賃金の伸び率、年金財政 参院選

西日本新聞 総合面

 参院選では、消費税増税や年金など社会保障制度の在り方が大きな焦点となっている。ところが、政府はその現状や将来予測を示す実質賃金(参考値)の伸び率や公的年金の「財政検証」を公表せずに選挙戦に突入した。有権者は政策の是非を判断する「事実」を知らされぬまま1票を投じることになるため、識者からは政府の姿勢を問題視する声が上がっている。

 厚生労働省の毎月勤労統計で伸び率が異常に上振れして注目されたのが、上振れ要因を取り除き、実勢に近いとされる実質賃金伸び率の「参考値」だ。

 野党は2018年の伸び率を前年比マイナス0・3%と独自に試算し「公式値」(0・2%増)との隔たりを指摘して、今年の初めから厚労省に正式な試算を要求。ところが、同省が設置した有識者検討会が難色を示して公表しておらず、実質賃金が伸びているか否かはあやふやなままだ。

 実質賃金が下がっているのに、消費税引き上げで物価が上昇すれば、生活を直撃する。「まさに泣き面に蜂。アベノミクスの失敗という『不都合な真実』がばれるのが嫌だから出さない」。安倍政権の経済政策「アベノミクス」を検証した著書のある明石順平弁護士は、そう指摘する。

 「実質賃金の真実は、消費税増税の是非に直接関わる。正しい情報を出さないのは有権者にとって大きな不利益だ」と批判する。

 公的年金の健全性を5年に1度、チェックする厚労省の財政検証も、6月に公表される見通しだったが、参院選後に先送りされた。

 財政検証は将来の人口や経済状況など変化予測を踏まえ、おおむね100年間の年金給付を試算し、制度が維持できるかを調べる。結果次第で保険料や給付水準を見直すことになる。

 老後資金2千万円問題で不安が高まる中、有権者の関心が高いテーマ。少子高齢化で将来の給付水準の低下が見込まれるため、選挙への悪影響を避けた形だ。

 元総務相で早稲田大大学院の片山善博教授は「判断材料を示さなければ、有権者が誤った判断をしかねない」と指摘。安倍政権が公文書改ざんなどによる「隠蔽(いんぺい)体質」を批判されながら高支持率を維持する現状を踏まえ、「隠しても支持率は下がらず、やり過ごせると高をくくっている」と分析する。

 片山氏は、野党の追及力不足や相次ぐ不祥事に有権者の鈍感さが増していることも背景にあるとした上で「権力側が情報公開しなければ、民主主義は成り立たない。今、民主主義が崩れる過程にある。それを正せるのは選挙しかない」と警鐘を鳴らす。

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