安保の負担 論戦なく 佐世保市 弾薬庫移転、漁業…課題なお

西日本新聞 長崎・佐世保版

佐世保市有福町から佐世保湾を望む。左手前に針尾島弾薬集積所の一部がある。中央奥に陸上自衛隊崎辺分屯地が見える 拡大

佐世保市有福町から佐世保湾を望む。左手前に針尾島弾薬集積所の一部がある。中央奥に陸上自衛隊崎辺分屯地が見える

 佐世保湾一帯に米海軍基地がある佐世保市のまちづくりは、日米安全保障体制の中でさまざまな制約を受けてきた。「基地に寛容な街」と呼ばれるが、住民にとって日米安保はもどかしい側面を持つ政治課題だ。

 中心市街地から車で南へ約30分、佐世保湾に面した針尾地区。ハウステンボスに近く、国の重要文化財に指定された針尾送信所(無線塔)が立つ。

 幹線道路から田園風景が広がる道を進むと、金網のフェンスにぶつかった。その向こうは米軍の針尾島弾薬集積所。案内してくれた針尾地区自治協議会長の冨川安憲さん(68)が、フェンスから約50メートルの距離に連なる民家を指さした。「住民は枕元に弾薬庫を置かれて眠っているようなものです」

 2011年、日米合同委員会は市中心部に近い米軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の機能を針尾島弾薬集積所に集約し、前畑弾薬庫を日本に返還することで合意した。実現すれば、針尾により多くの弾薬が運び込まれる可能性がある。

 市の資料を見ると、09年4月に「地元合意形成」とある。住民はすんなりと受け入れたのか。針尾島弾薬集積所に近い宮ノ浦地区の70代男性は「もちろん反対する人もいて、地区を二分しかねない状況だった。最後は、やむを得ず、国策に協力する流れになった」と振り返る。

 だが、国から何の説明もない状態が長く続いた。九州防衛局主催の説明会が開かれるようになったのは、7年後の16年から。日米合同委員会の合意内容が進んでいるかどうかも判然としない。「われわれの苦渋の決断を忘れずに、丁寧に説明を続けてほしい」。冨川さんは静かに願う。

 佐世保湾は米軍基地がある影響で8割が制限水域になっており、自由な航行ができない。

 海で生計を立てる漁師もそうだ。針尾漁協が管轄する海域は、制限水域の割合が市内の漁協の中でも大きい。漁協によると、養殖いかだや魚礁を設置しようとしても、米軍の許可が出るまで1、2年はかかる。湾内を航行するホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)の騒音が漁に与える影響もないとは言えない。

 「自分たちの漁場だけど自分たちのものではない」。それが実感だ。

 市は前畑弾薬庫の機能移転や制限水域の緩和を国に求めている。朝長則男市長は2月、佐世保を視察した岩屋毅防衛相に直接要望した。市長との会談後、取材に応じた岩屋氏は市の要望に触れ「今後も地元負担の軽減に努める」と述べた。だが具体的な見通しは示さなかった。

 6月にトランプ米大統領が「不公平な合意」と不満を表明した日米安全保障条約。締結以来、佐世保が抱えてきた負担が国政選挙で論じられることは少ない。今回の参院選も同様だ。

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