【参院選あなたの声から】政治家の質下がった? 小泉氏以降に変化

西日本新聞 社会面

下関北九州道路の建設予定地付近の岸壁。地元の工業地帯関係者は「忖度発言で悪い影響が出なければいいが…」と気をもむ=10日午後、北九州市 拡大

下関北九州道路の建設予定地付近の岸壁。地元の工業地帯関係者は「忖度発言で悪い影響が出なければいいが…」と気をもむ=10日午後、北九州市

 相次ぐ政治家の失言を受け、特命取材班に「稚拙な議員が増えた」「素質に疑問符が付く人がいる」との声が多数寄せられた。政治家の失言や放言は昔からあるが、最近は「忖度(そんたく)発言」や北方領土を巡る「戦争発言」など耳を疑う内容が多い。政治家の質は下がったのだろうか。

 「余計なひと言に迷惑している」。北九州市の工業地帯で製造業を営む男性社長はため息をついた。「余計なひと言」とは、国土交通副大臣だった塚田一郎氏が4月にあった同市の集会で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元を結ぶ下関北九州道路の整備を巡り、両氏の意向を「私が忖度した」と述べたことを指す。

 関門トンネルと関門橋の老朽化を主な理由に「第3のルート」として期待される下北道路。財政難などで2008年に凍結されたが、17年度予算で調査費が復活、19年度に国直轄調査事業に格上げされた。物流や災害への備えからも必要性は高いと男性は話す。

 「『今の政権で前に進めましょう』なら問題なかった。なぜ誰かが傷つくようなことをあえて言うのか」

 失言といえば、桜田義孝前五輪相も忘れてはいけない。競泳選手の白血病発表の際に「がっかりした」と言ったり、東日本大震災被災地を地盤とする議員のパーティーで、議員は「復興以上に大事」と述べたりして辞任に追い込まれた。

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 小選挙区制の導入によって議員が育たなくなった、「1強」政治が続き緊張感がなくなった‐。失言が続く背景として、さまざまな指摘がなされている。

 九州大の出水薫教授(政治学)は、政治家の発言スタイルの変化を挙げる。01年、反対派を「抵抗勢力」と呼んだ小泉純一郎首相(当時)の登場以降、敵味方を分けて相手をおとしめるスタイルが浸透したとみる。17年の東京都議選で安倍首相がやじを飛ばした聴衆に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言したのは典型例という。

 出水教授は「こうしたスタイルの延長で、自身の発言への警戒感が薄れている」と話す。離合集散を繰り返す野党を相手に与党は厳しい選挙戦を経験しておらず「緩みから失言を生むハードルが下がっている」。

 失言の取り上げられ方に変化も。1980~90年代は歴史認識を巡る発言が問題視されたが、近年は「女性は産む機械」(07年、柳沢伯夫元厚生労働相)など人権に関わる内容が目立つ。

 性的少数者(LGBT)、ヘイトスピーチ、さまざまなハラスメントなど人権問題は広がりをみせている。インターネットの発達で誰もが情報にアクセスし、多様な意見を発信できるようになり、政治の世界では聞き流されていた発言でも看過できなくなっている。

 一方、ネット上で炎上した発言をメディアが後追いして報じるケースもある。出水教授は「言うべきでないことを言った者がかえって注目を集めるような報道と、相手をさらし者にする発言スタイルが響き合い、悪循環に陥っている可能性もある」と懸念する。

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 国会などの議論の形骸化に着目するのは、福岡大の広沢孝之教授(政治学)。「かつての自民党なら政策を巡り執行部を批判する議員もいたが、今はまともに批判する人がいない」。6年半に及ぶ長期政権の下、政策論争を重ねてスキルアップする機会が減り、議員の質が高まらない構造的な問題があるという。

 広沢教授は「政治家全体のレベルはそんなに変わっていないが、議論できる人が表舞台に立たせてもらえなくなった」と指摘する。

 こうした状況は市民にどう映るのか。特命取材班にはこんな声も届いている。「今の国会は論戦というより口げんか。白熱した議論ができなければ政治への信頼と関心を引き付けることはできない」

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