外国人就労拡大 新たな隣人支える視点で

西日本新聞 オピニオン面

 「多文化共生」-国政の新たなキーワードとして、与野党双方が参院選公約の中でうたっている。他の争点の陰に隠れ、注目度は高くないが、地方自治とも密接に関わるテーマだ。1票の選択に当たり、増え続ける外国人の存在にも目を向けたい。

 政府は今春、「特定技能」という在留資格を設け、外国人労働者の受け入れを大幅に拡大する新制度の導入に踏み切った。従来、専門分野を原則としていた在留枠を単純労働にも広げる施策だ。日本の入管制度の歴史的な転換ともいわれている。

 少子高齢化に伴い、人手不足は深刻化している。その中で、外国人労働者は増加の一途をたどり、技能実習生や留学生を含めた総数は約146万人(昨年10月末現在)に膨らんでいる。

 政府は新制度に基づいて今後5年間で最大約34万人の外国人を受け入れ、地方での雇用も促進する方針だ。対象は介護、外食、建設、宿泊など14業種に及ぶ。技能実習生からの移行が可能で、条件次第で家族の帯同、将来的な永住も認める。

 問題は、これらの人々を日本人と同等に処遇し、日常生活でも社会に溶け込めるよう支援する環境が整っているかである。

 参院選で、与党は「新制度の適正な運用」を掲げ、外国人の日本語教育推進、相談窓口の拡充などを図ると公約している。野党側は外国人の人権擁護を強く訴え、共産党は技能実習制度の廃止、社民党は同制度の抜本見直しが必要と主張している。

 技能実習生は本来の趣旨に反して低賃金で働かされたり、暴力を振るわれたりするなど劣悪な境遇に置かれ、失踪者が後を絶たない。留学生に関しても出稼ぎ目的が目立ち、大学側がそれを承知で大量入学させたとみられる事例も発覚している。いずれも政府の実態把握は甘く、対策は後手に回っている。

 こうした状況のままで新制度はうまく機能するのか。地方自治体の外国人対応は大丈夫なのか。残念ながら、選挙戦で十分な議論は行われていない。

 今年1月1日現在の住民基本台帳人口でみると、日本人は前年比約43万3千人減少したのに対し、外国人は全都道府県で増加し、前年比約17万人増の266万人余に達した。九州7県の外国人総数は約13万7千人で、雇用先は約1万5千カ所(昨年10月末現在)に及んでいる。

 外国人を地域の隣人として迎え、その暮らしを支えることは地方創生を図る上でも欠かせない。自治体の取り組みと併せ、住民の意識改革も必要だろう。政治家や行政機関だけでなく、私たち自身の役割も考えたい。

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